人生を変えた質問。おまえは何がしたいんだ。

   

鎌倉のマンション

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2012年9月16日。鎌倉のマンションの最上階。

 

「おまえは何がしたいんだよ!俺は晩酌がしてぇんだよ」

 

どうしたことだろう。いつの間にこんな展開に。ビールで顔を真っ赤にしたコバさんが、口角泡を飛ばして俺に詰め寄る。

 

「何が、って…。仕事から帰ってきたら食事を作って、子供を風呂に入れて、寝かしつけて……とか」

 

「そういうことじゃねぇんだよ!おまえは何がしたいんだよ!俺は晩酌してぇんだけどな」

 

「うん、それはさっき聞いたw」

 

鎌倉のマンションの最上階、来客用のラウンジスペースを借りて、大学時代のサークル仲間を呼んだのだ。最初はランチを楽しみつつ、それぞれの家族の子供と遊んだり、ごく穏やかな時間が流れていたはずだ。

 

「聞いたんなら俺が何を言いたいかわかるだろ!

 

 

おまえは、なにが、してぇんだよ!!」

 

 

状況が急展開を迎えたのは、「ヒロキの奥さんとお子さんは?どこにいるの?」と質問されてからだ。今日、一番聞かれたくない質問だった。

ただ、せっかく鎌倉まで来てくれたみんなを誤魔化すようなことはできなかった。もごもごと口ごもりつつ、自然とここ数年の問題、ここ数ヶ月の葛藤、そしてここ数週間の針の筵のような状況について説明せざるを得なくなった。

すると、それまで黙々とビールを飲んで聞いていた先輩のコバさんが口火を切ったというわけだ。

 

「俺が何をしたいか…?う〜ん…」

 

「何をしたいかもわからねぇのかよ!俺は晩酌がしてぇんだよ!!」

 

まるでロボットのように「おまえは何がしたいんだ」「俺は晩酌がしたいんだ」と繰り替えすコバさん。あまりにも同じことを言われ続けて、俺も考え込んでしまった。

会社の仕事は何があっても定時までに終わらせ、真っ直ぐ家に帰る。家に帰りたいからか?帰って晩酌がしたいからか?

断じて違う。むしろ、家には帰りたくない。ただ、何が起きているかわからなくて怖いから、確認のためになるべく早く帰る必要があるだけだ。子供が心配だからだ。ここ数ヶ月、そんな生活を続けていた。

その問題、平たく言えば育児ノイローゼだろうか、それがあまりにも深刻だったため、思いつくあらゆる手段を講じた。近所の保育園に事情を説明して、一時保育という手段もとった。それでもダメだったため、今は義母が家にいる。

それ以来、問題は鳴りを潜めている。その代わり、全てが俺のせいになってしまい、ことあるごとに責められている。少なくとも、そのように俺は感じている。

 

 

「それが楽しいのかよ!!」

 

 

コバさんが繰り返し言っていることは、もしかしたら人生の核心を突いているのではないだろうか。そんな風に思い始めた。今の今まで、「何がしたいのか」と自分に問いかけたことなどなかった。

 

 

「楽しいわけないだろ!!」

 

 

「それならおまえは何がしたいんだよ!」

 

 

「俺は……」

 

「ほら、もういい加減にして。酔ってるでしょ」

 

うつむいて考え込んでしまうと、コバさんの奥さんが俺に助け舟を出してくれた。それからしばらくして、この会はお開きになった。

鎌倉のマンション

 

みんなを送り出して、ラウンジスペースを掃除し終わっても、俺は家に戻りたくなかった。

だから、ラウンジスペースのソファに深く腰掛けて、俺はコバさんの言ったことを考え続けた。

 

次回「人生を変えた自問自答。俺は何がしたいんだ」に続く

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