宮古島挑戦記 2016 – 第5話「楽しく働きたいです」

      2016/06/05

Yasuko on the stage

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東京マラソンEXPOが成功裏に終了し、カズさんの採用が内定した2月末のこと。最高執行責任者のマークから、短いがインパクトのあるメールが入った。

「セールスが決まって良かった。次は、カスタマーサービスマネージャーを雇う必要がある。今すぐ」

今すぐとはどのくらいなのか聞くと、「2週間で人を探して決めてくれ」と言う。そんな無茶なと思いつつも、とりあえず採用活動に入った。採用活動とは言うものの、人づてに「誰かいい人いませんか?」という口コミレベル。そんなことで、2週間で決まるのだろうか…。

人を探しながら、その一方でOnジャパン設立準備は大詰めに入りつつあった。会社設立日は4月末、オペレーション開始日は予定通り5月1日に決定した。あとは、全ての取引先に、Onジャパン株式会社設立の旨を公式に報告しなければならない。3月6日に、「Onジャパン株式会社設立のご案内 – 日本のランナーと販売店の皆様へ」と題した書面をキャスパーと俺の連名で各取引先に送付し、同日、自分のFacebookでも報告をした。これまでOnを応援してきてくれたユーザーに、取引先と同じタイミングで報告するのは当然のことだと思えたからだ。

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・3月6日 Facebook

【ご報告】

いつも応援いただいている皆様にご報告があります。

このたび、Onは、日本現地法人「Onジャパン株式会社」を設立することを決定しました。5月1日よりオペレーションを開始します。私は、5月1日よりセールス&マーケティングディレクターとしてOnジャパン株式会社に加わることになりました。

2013年2月に日本でOnブランドを立ち上げてから2年、皆様に応援いただいてきたことで、Onスイス本社も私自身も、このような決断をすることができました。

Onのミッションはシンプルです。「ランニングを楽しく」。Onのランニングシューズは、きっと日本のランナーの皆様に楽しさを感じていただけるものと信じています。その楽しさをお伝えできるよう、今後より一層努力したいと思っています。

今後とも、何卒よろしくお願いいたします。

Run on clouds.
駒田 博紀

Announcement
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2015年9月から約半年、ごく一部の関係者以外に言えず、コツコツと準備を続けてきたことが、ようやくひと段落を迎えた形になった。その日の夜、Onアスリートの岩本さんから連絡があった。

「英語の出来る事務員を捜していると人づてに聞きました。適役います。クラウドレーサー愛用者で岩本のBadwaterクルー偏差値70超。数日前に勤め先を退職し、現在求職中。しかも美人です(笑)」

On愛用者のランナー、英語ができて現在求職中。しかも美人。さらに計ったようなタイミング。もうその人しかいないだろ。俺はすかさずその人、前原靖子 (ヤスコさん) に連絡を取り、面接の約束を取り付け、3月9日に桜木町のスタバで会った。

ヤスコさんは、一見していかにも仕事のできそうな、目力の強さが印象的な女性だった。フルマラソンを3時間半、100kmを10時間40分で走るランナーには見えない。退職したばかりの会社名を聞くと、誰でも知っているような大企業だった。岩本さんの言っていたことは大袈裟ではなかった。

本来、面接というのは、受験者と面接官の話す比率は8:2くらいで丁度いい。それなのに、ヤスコさんと会ったときは、一緒に働いてもらいたいという気持ちが先に立ち、大部分は俺が話してしまった。その席で、「働くとき、何を一番大切に思いますか?」と聞いたとき、意外なほどシンプルな答えが返ってきた。

「楽しく働きたいです」

Onの目指すところは、「ランニングを楽しくすること」。それなら、俺たち自身が楽しめなければ嘘だ。だが、彼女のそれまでの職場は、楽しんで仕事をするという雰囲気ではなかったらしい。俺の職場も、楽しんで仕事をできる雰囲気から程遠かった。

眉間にシワを寄せ、頑張っている雰囲気を出し、必死な演技をしていれば成果が出るなら誰だってそうする。でも、実際はそうではない。苦しいことや面倒臭いことがあろうとも、心の底では楽しみながら熱心にやれなければ、本当に目指すところにはいけないのだ。少なくとも、俺にとってはそうだった。だから、ヤスコさんのシンプルな答えは心に響いた。俺は、彼女の採用をマークに推した。

セールスの鎌田和明、カスタマーサービスマネージャーの前原靖子、そしてセールス&マーケティングディレクターの俺。こうして、On ジャパン立ち上げメンバーの3人が揃った。なんとかギリギリ間に合った。岩本さんのトークショーの壇上でゲストスピーカーとして話すヤスコさんを見上げながら、俺は心の底からホッとしていた。

Yasuko on the stage

あとは、5月1日の立ち上げを残すのみ……ではなかった。

その前に、宮古島トライアスロンが控えている。こんな状態でやれるのだろうか。それでも、2度目のストロングマンに挑戦するため、俺はひとり宮古島に向かった。

第6話「ストロング青空ブース」に続く

 - 宮古島トライアスロン2016