宮古島挑戦記 2016 – 第4話「一人目の仲間、鎌田和明」

   

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第3話「ビッグ・イン・ジャパン」に戻る

4日間のスイス滞在を終えて日本に戻った俺は、「ビッグ・イン・ジャパン」プロジェクトを進めるべく、スイス本社の人間たちと連携しながら、ありとあらゆる準備を行うことになった。

まず考えたことは、ブランドの顔とも言えるセールス担当者を誰にすべきか、ということだった。営業経験、業界経験、語学力、ITスキル、アスリートとしての実力、そして最も大事な人柄。全部備えていれば言うことはない。ただ、さすがにそれは難しいのではないか。何が一体大事なのか。俺は悩んだ。

ただ、そのことだけに気を取られているわけにもいかない。何しろ、東京マラソンEXPOが翌月に迫っているのだ。Onジャパン設立直前の東京マラソンEXPOは、今後のブランド展開の成否を占う試金石とも言える、重要なイベントだと考えていた。On共同創業者のキャスパーが、そこに合わせて来日することも決まっていた。絶対に成功させなければならない。そのためには、EXPOブースで販売を手伝ってくれる人が必要だ。

その手伝いをお願いしていた人の中の一人に、Onアスリートの鎌田和明 (カズさん) がいた。彼には、店舗主催のランニングイベントなどでコーチをお願いしたことが何度かあった。そのたび、彼の前向きで真摯、かつ爽やかな人柄に感心したものだった。

そんな彼とFacebookメッセンジャーでEXPOについて打ち合わせをしているとき、ふと思った。「この人ならもしかして…」と。そこで、現在Onジャパン設立に向けて動いていること、その設立メンバーの一人として加わって欲しいと思っていることを伝えた。

そして2月9日、彼と横浜のスタバで会った。改めて今後の計画について説明し、ブランドの顔として迎え入れたいと気持ちを伝えた。彼は新しいチャレンジを受け入れてくれた。

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東京マラソンEXPOは大成功に終わった。前年の倍以上のシューズが売れた。Onは日本のランナーに必ず受け入れてもらえると、キャスパーと二人で喜んだ。正直言って、ものすごくホッとした。

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Tokyo Marathon Expo 2015_2

EXPO後、俺とキャスパー、そしてブースを手伝ってくれたカズさんは3人で横浜を走り、とある寿司屋で夕食を共にした。カズさんに次々と質問をしていくキャスパー。誠実に答えていくカズさん。彼らの言葉を必死に訳す俺。寿司の味など全く分からない。そして、キャスパーの哲学的とも言える質問が。

「カズ、なんでOnが日本に必要だと思う?」

瞬間的に俺が考えついた答えと寸分違わぬことを口にするカズさん。驚きながらも、誤解のないよう慎重に訳す。訳し終えたとき、キャスパーは「ありがとう。いい答えだ」と言った。安心した俺は、またもや英語死寸前になった。

キャスパーの来日最終日、二人で食事をしたとき、彼は俺にこう言ってきた。

「カズには営業経験も業界経験もない。東京マラソンEXPOでの動きを見れば、販売の素人だとすぐに分かった。英語も話せない。それでも彼を雇うべきだと思うか?」

俺を試していることはすぐに分かった。俺は、「絶対に彼しかいない」と即答した。

営業経験も業界経験もあるに越したことはない。英語だって話せた方が絶対にいい。いちいち英語死しているヤツなんて心配で仕方ない。でも、俺たちは日本にまだ無い物事を広めようとしているのだ。それならば、既存の知識や経験に縛られた人ではなく、情熱に溢れ、一緒に前に進んでいこうとしてくれる人こそが必要だ。カズの人柄や情熱は、知識や経験や語学力を補って余りあるものだ。足りない部分は俺が埋めるし教える。だから彼にしよう。

「…おれ そう しんじる」

俺はキャスパーにそう伝えた。すると、キャスパーはいつものウィンクをしながらこう言った。

「分かった、ヒロキがボスだ」

鎌田和明の採用が決定し、Onジャパン設立が一歩先に進んだ瞬間であった。

第5話「楽しく働きたいです」に続く

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