宮古島挑戦記 2018 – 第2話「第2章へ」

      2018/05/10

打ち上げバーベキュー

第1話「制限時間30秒前のフィニッシュ」に戻る

 

レース翌日、今までと違う感情が生まれつつあるのを感じた。

フィニッシュラインを越えた瞬間、それから宿に戻って眠りについたときにはどこにも見当たらなかった感情。ハッキリと表現できないモヤモヤ感。でもどうしてだ。

俺は完走できた。去年と同じように、仲間や家族の前でフィニッシュラインを越えたのだ。良かったじゃないか。そう、あれはあれで良かったのだ。そう思いながら、俺はブース出展のためにJTAドームに向かった。合間を見て、完走証を受け取る。

第33回大会完走証

 

「あっ、駒田さん!どうでした?」

 

「制限時間30秒前!?もってますね〜」

 

昨日のレースに出場したトライアスリートたちが、ブースに戻ってきてくれる。お互いのレース結果について報告し合い、喜び合う嬉しい時間。

 

「ワザとギリギリ狙ったんでしょ?」

 

そう、嬉しい時間だ。そう思いながら、笑顔でみんなと会話を続ける。それなのに、あのモヤモヤが少しずつ形を変え、心を抉りはじめる。

その正体がいまひとつはっきりと掴めないまま、ブース出展を終え、アワードパーティーを見届けた。

第33回大会ふれあいパーティー

 

その日の夜、宿泊先の「皆愛マンション」屋上で、関係者の打ち上げバーベキューを行った。

 

「今回も劇的なギリギリゴールを果たした駒田さん、乾杯の音頭をお願いします〜」

 

もはや無視できない大きさのモヤモヤの塊が、喉元までせり上がっている。それでも笑顔で乾杯の音頭をとらせてもらい、オリオンビールを勢いよく飲む。あまり積極的に人と話せない。こんなことは最近の自分では珍しいと、まるで他人事のように感じる。

 

「駒田さん、そろそろ第2章行きましょうよ!」

 

その状態を打ち破るキッカケは、TKこと竹谷さんの一言だった。「第2章」という言葉を聞いた瞬間、モヤモヤの正体がハッキリした。

彼は、言わずと知れた元オリンピアン。マウンテンバイクの世界の頂を見た男が、トライアスロンという新しいフィールドで今もなお挑戦を続けている。その結果、今ではトライアスロンでも頂点の一角を占める存在となっている。

一方で俺はどうだ。今回のレースもギリギリになってしまった。遠藤さんから目標として提案された12時間切り、通称「勝ったも同然プラン」の達成はおろか、今まで3回完走した中で、最も遅いフィニッシュタイムだった。

頂点を見た男ですら進化しようと努力を続けている。それなのに、俺は成長していない。これから先も、こんな展開でレースを続けるのか。それは「挑戦」と呼べるのか。

Onは、“Good is not good enough.” を企業文化として掲げている。「良いものは十分に良くはない」…直訳すると分かりにくいが、常に挑戦し改善する姿勢を意味しているのだと理解している。理解していたはずだ。それなのに、宮古島トライアスロンという大事な場所で、俺自身がそれを体現していない。

竹谷さんが「第2章に行きましょう」という表現を使った瞬間、そんなことが脳裏を駆け巡った。何がそんなにモヤモヤと引っかかっていたのか、全てハッキリした。”Good is not good enough.” をあらゆる局面で体現したいと理解したのだった。俺はもう次の段階に行くべきなのだ。

 

「10時間目指しましょうよ!」

 

「えっ?10時間!?」

 

だが、俺は竹谷さんの言葉に思わず笑ってしまう。しかし、ビールの杯を重ねていた竹谷さんは笑っていない。隣に座っているカズに聞いてみる。

 

「そんなことできるかな…?」

 

「駒田さんの身体能力は高いです。可能性はあります」

 

竹谷さんもカズも、至って真面目な表情をしている。笑っているのは俺だけだった。いつかこれに似たことがあった。「できないと思ったから笑ったんじゃないのか?」というキャスパーの言葉。できると思っている側は笑わないものだ。

俺には可能性がある、とこの2人は思ってくれている。それを信じていないのは、俺自身だったらしい。

バーベキューが終わる頃、俺のモヤモヤ感はなくなっていた。第2章に行ってみたい。”Good is not good enough.” を証明したい。成長するため努力をしよう。

そうすれば、持ち越しになってしまった「勝ったも同然プラン」をいつか実現できるはずだ。

打ち上げバーベキュー

 

第3話「しげちゃんの宣言」に続く

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