宮古島挑戦記 2018 – 第13話「状況判断の遅れ」

      2018/05/29

宮古島2018_ラン

第12話「Get into gear、気合いを入れろ」に戻る

 

走り始めると、身体がやたら軽く感じることに驚いた。6分を切るペースで走ることができる。

5時間で走るためには、キロ7分ペースを保ちたい。できれば今はキロ6分半くらいで貯金できれば嬉しい。ただ、6分切りペースはやりすぎのような気がした。だから、意識してペースを落とす。

スタートして3km地点、Onジャパンの応援団が見えた。おそらく彼らは、応援団としては宮古島トライアスロン最大のお祭り集団だと思う。一際目立ち、一際異彩を放っている。”Be different” を身体全体で表現している。そんな彼らが誇らしい。俺も彼らが誇れる存在でありたいと思う。

宮古島75km地点_2
※ バイク応援中のお祭り集団。

 

応援団に笑顔にしてもらってから、気を引き締め直して走る。暑くなってきたので、全てのエイドでかけ水をして補給する。今年はGarminがあるので、次のエイドまでの距離が分かる。それは精神衛生上、この上なく助かる。しかし、同時に少し複雑な感情も湧いてきた。

TIMEXに対する想いはある。初めて俺にトライアスロンを見せてくれたのは、TIMEXだったからだ。今走っているこの道に繋がるキッカケをくれた、大事な存在だと言える。だから、これまでずっとTIMEXを使ってきた。

TIMEX Ironman Triathlon 8-lap Reproduction

 

しかし、俺の前職の輸入代理店は、どうしてもハートレートモニター/GPSウォッチを販売しようとしなかった。当時聞かされた理由は、「投資に見合う販売が見込めない」だった。

そうこうしている間に、「スポーツウォッチと言えばTIMEXのIRONMANシリーズ」というイメージすら失われていった。その間、SUUNTO やGarmin、Polar 果てはEpsonにシェアはどんどん奪われていった。

ふざけるな、と思う。投資に見合う販売が最初から見込める奴なんて、この世に一体どれだけいるというのか。誰もがリスクを取り、そうした者だけが前に進めるのだ。

彼らは「販売が見込めない」という理由でOnも放り出した。しかし、その一方でリスクを取って日本法人を作ったキャスパーたちがいた。その結果、OnはTIMEXを超える売上を達成することだろう。おそらく、今年中には。新しい何かを成し遂げるなら、夢を見つつリスクは取らねばならない。現状維持を望むだけの心は、後退しているのと変わらない。

それを彼らに伝えられる言葉を持たなかった当時の自分を苦々しく思う。しかし、今そんなことを考えても仕方のないことだ。そろそろ8km、5分の1は走ったことになる。

 

 

「ひーろーきーー!!」

 

 

ドン・キホーテのあたりから大きな声が聞こえる。PI TRI のマリナ康輔「どうすかどうすかw」と声をかけてくる康輔にスイムでの感謝を込めてハイタッチし、並走してくれるマリナにバキューンと一発。

PI TRI_マリナ

 

 

「いけぇーー!!」

 

二人の声を背に受けて、さっきまでの複雑な気持ちが少し晴れたのを感じる。現状維持は後退と変わらない。俺は去年よりも前に進まなければ。第2章を開くのだ。

9km地点。そこには例年通りたくさんの応援の人たちがいた。May Stormのみんなもいる。毎年必ずここで応援してくれる高木さんもいる。彼らとハイタッチし、さらに前へ。

11km地点、宮古島温泉。ここには、いつもまどかみかがいる。去年はここでほとんど終わっていたが、今年はまだイケる。チームちんすこうの私設エイドで補給させてもらいながら、少し心配そうにしているまどかに「大丈夫!」と請け負う。

宮古島2018_ラン11km地点

 

しかし、そこから先の厳しいアップダウンのコースを前に、徐々にペースが落ちてしまう。キロ7分を保つことすら難しい。エイドでは歩いて補給し、それ以外ではなるべく6分50秒くらいのペースを保つように頑張る。

 

「あー!駒田さーん!!」

 

疲れてきたときの秘儀「目をつぶって走るの術」を使い始めてしまった頃、反対側からPI TRIのアケオが笑顔で走ってきた。

 

「バキューンバキューン!」

 

笑顔のまま、両手の指で俺をバンバン撃ってくる。きっとしんどいだろうに、楽しむことを忘れずにレースをする彼女を尊敬する。アケオのバキューンを何十発も食らう中、俺も辛うじて一発彼女に撃ち返し、動かなくなり始めた脚を前に進ませる。

 

(アケオが最初だったか…)

 

ふと心配になる。ユウキはどこにいるんだろう。トラブルだろうか。少し走ると、珍しく笑顔のないユウキが走ってくるのが見えた。キツそうだ。それでも、ハイタッチした瞬間、彼はいつもの笑顔を浮かべた。すると、心配は霧散した。

いつも笑顔でレースしてポジティブな空気をふりまくアケオ、どんなときにも人を安心させてくれる笑顔を浮かべるユウキ。俺はいいチームに入ったものだと思う。つくづく幸せを感じる。

それなのに、脚が動かなくなってきた。太腿をパンパンと叩いて進むも、18km地点、大きな登り坂を前についに脚が止まってしまった。

 

(折り返しにたどり着きさえすれば…)

 

これまでのレース展開を思い出す。これまで完走した3回は、いつも往路より復路の方が少しだけ速かった。復路の方が下り坂が多いからだ。折り返し地点にたどり着きさえすれば、そこからもうひと頑張りしさえすれば、まだ望みは残っているはずだ。

そう思い込もうとしながら、歩いたり走ったりを交互に繰り返す。走っているのも歩いているのも変わらないようなペースになってきてしまった。

少しずつ焦ってくる。早くペースを取り戻さなければ。もっと速く進まなければ。12時間を切らなければ。

 

この焦りが自分の状態把握を遅くした。

宮古島2018_ラン

 

第14話「フィニッシュラインで」に続く

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