宮古島挑戦記 2016 – エピローグ「次の挑戦へ」

      2016/08/18

お前のハートにバキューン

第15話「#お前のハートにバキューン」に戻る

宮古島トライアスロン、最終ランナーがフィニッシュラインを越えた頃に上がる花火。胸以外の全身が痺れてうまく動けないし、今は顔にタオルをかけてしまったので見えもしないが、心に刻み込むようにして音を聴く。

Fireworks 2016

「大丈夫ですか?動けますか?」

涙が止まったのでタオルを外すと、スタッフが心配して覗き込んでくれていた。正直あまり大丈夫な感じはしない。何しろうまく答えることもできないのだ。口が痺れていると不便だ。モゴモゴしていると、別のスタッフが車椅子を持ってきてくれた。大げさな感じで恥ずかしいが、それに乗って救護テントへ。

「痺れてますか?吐き気はありますか?」

どっちもものすごくあります。

「それなら病院で点滴受けた方が早いかなぁ…どうしますか?」

県立宮古病院。去年大変お世話になった場所だ。しかし、今年はどうしても行きたくない。試合に勝って勝負に負けたような感じがする。

「それ、去年やったのでもういいです(笑)」とだけ答え、スタッフからはOS-1を受け取った。チビチビ飲んでいると、サトシくんが「Go Go Hiroki」うちわを振りながらテントに入ってきた。

「ゴーゴーヒロキ〜w 調子どう?」

「うちわ、どしたのw」

「ん?まどかさんから借りたw いいねこれw」

サトシくんに無事だと伝え、気になっていたいがちゃんのことを聞く。見事、制限時間4分前に完走したらしい。そして、病院にも行かずに済んだとか。良かった。それにしてもなんというメンタル。

サトシくんがテントを出ていき、ほどなく室谷さんが入ってきた。「駒ちゃん、よかったなぁ〜!」と言いながら、車椅子に座った俺をハグしてくれる。去年の宮古島でも洞爺湖でも、「フィニッシュラインで待っとるで」と言ってくれていたのに、一度もそこにたどり着けなかった。今回が初めてだ。グッとこみ上げるものを感じる。

「駒ちゃん、ほら写真撮るで!笑って!」

室谷さんが俺とまどかの写真を撮ってくれる。思いきり笑ってみた。うまくできただろうか。

2年前にも感じたが、やはりトライアスロンは1人ではできない。応援してくれる家族や仲間、「フィニッシュラインで待ってる」「フィニッシュラインで会おう」という約束が自分を後押ししてくれる。弱い自分はそういうことを支えにしないと無理だった。

「応援してくれてありがとな」

室谷さんが救護テントを出て行った後、隣のまどかに礼を言う。レース中も散々待たせた。ラン30km地点で会ったとき、泣きそうな顔をしていた。思えば、去年は彼女に完走した姿を見せたことがなかった。DNFばかりだったから、さぞ心配をかけただろう。

「ロング…やめようかと思ったよ」

手足だけでなく、舌まで痺れている。うまく喋れない。

「苦しくてさ」

「うん」

苦しさのあまり、レース中、弱気の虫に寄り切られそうになってしまった。でも、今年はまだもう一つ残っている。洞爺湖で見せられなかった姿を、今度こそ。

「でもやっぱりやる」

また花火が上がった。隣の妻に宣言する。

「うん、がんばって!」

少し驚いて彼女の顔を覗き込んでしまった。止められるかも知れないと思ったからだ。まどかは笑っている。指をいつもの形に曲げて彼女に向ける。マッサ、やっぱり便利だわこれ。

「次はアイアンマンだな!」

きっと大丈夫、必ずイケる。

<宮古島挑戦記 2016、完>

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