宮古島挑戦記 2014 – 第3話「はじめてのオリンピック・ディスタンス」

      2016/05/17

First Olympic Distance_1

第2話「自分を変えろ」に戻る

全日本トライアスロン宮古島大会。日本人トライアスリートにとって、聖地とも言われる場所。宮古空港に到着した瞬間から、トライアスリートや彼らを迎える島の人々の熱を感じた。

風にはためくストロングマンの旗、島のあちこちに貼られた出場者の似顔絵が描かれた応援バナー、それら全てが「ここは特別な場所なんだ」と思わせてくれる。

Onのプロモーション活動を行い、レース当日は西内洋行選手をはじめとしたOnアスリートを追いかけ、日が沈んでからは一般のアスリートを力の限り応援した。

フィニッシュラインで輝くような笑顔を浮かべ、喜びの声を上げ、仲間に迎え入れられ、あるいは力及ばず涙を流すアスリートたち。そんな彼らの姿を見ているうち、「頑張れ!」と呼びかけるだけだった自分の心に変化が生まれていた。頑張るべきは自分じゃないのか。本気で彼らを応援するなら、見ているだけじゃなく、自分も本気でやるべきなんじゃないのか。

見事完走を果たした祥平さんとフィニッシュラインで花火を見上げた瞬間、その想いが言葉に出た。「これは見るものじゃなくて、やるものなんだ」と。

まずはジョグから…と思ってはじめたトレーニングだったが、宮古島でようやく気持ちが固まった。俺はストロングマンに、そしていつかアイアンマンになる。これはもう、自分との約束だ。だから、破れない。

宮古島から戻り、どうしたらストロングマンになれるのか改めて調べた。そして、そもそも宮古島に出場するには、オリンピック・ディスタンスの完走経験が必要だと分かった。つまり、渡良瀬を完走すれば、宮古島に一歩近づくというわけだ。勢いでなんとなくエントリーしていた渡良瀬だったが、モチベーションが俄然高まった。

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・2013年4月26日 Facebook

昨日は夕食をごく軽めにして14km走り、その後当然のように襲ってきた空腹感を無視して寝た。

すると、今朝は空腹のあまり、目覚ましが鳴る前に起きてしまった。朝食をどうしようか考えながら品川駅構内を歩いていると、一風堂の看板が目に留まった。人生初の朝ラーメン。キッチリ替え玉も頂いた。

昼メシは同僚とトンコツラーメンに。朝もトンコツ、昼もトンコツ。そうなると、夜もトンコツじゃないといけないような気がしてしまい、またトンコツ。人生初の三食連続ラーメン。奇妙な達成感と、それを大きく上回る罪悪感。

帰宅してすぐに着替え、ランニングに飛び出す。昨日はいいペースで走れたのに、今日は身体が重すぎる。渡良瀬が控えているというのに、俺は一体何がしたかったんだ…。バテバテでとりあえず今日は8km。走り終わり、トンコツ混じりの汗をかきながらふと上を見上げると、月がきれいだった。なんだか申し訳ない気がした。

渡良瀬まであと23日。
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モチベーションが高まってこんな感じとは情けない…。ランの距離は少しずつ伸びてきたが、スピードは相変わらずキロ6分前後を行ったり来たり。

4月29日に24kmラン、平均6:23 min/km。長い距離を走れるようになっているが、速くなっている感じはない。宮古島で出会ったアスリート達の姿を励みに頑張る。

ゴールデンウィークは、ある程度まとまったトレーニングができた。スイムも長く泳げるようになってきた。ただ、ゴールデンウィークが明けて仕事が立て込み、一気に練習量が減ってしまった。軽いランやストレッチで調整をしているのだと、自分に言い聞かせる。

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・2013年5月14日 Facebook

ゴールデンウィークが明け、予想通り仕事が立て込んできた。今日は1週間ぶりのラン。

Rockyのサウンドトラックを聴きながら走る。”Eye of the Tiger”や”Gonna Fly Now”が流れると、いきなりペースが上がってしまう。我ながら単純な性格。でも、全体的にはのんびりジョグ。

トレーニングを始めた頃は、自分にとっての「のんびりジョグ」は6:30 min/kmくらいだったが、今日は5:34 min/km。少し進歩が見られる。

渡良瀬まであと5日。
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そして、レース前日の5月18日。Rockyのサントラをガンガンかけながら渡良瀬入り。宮古島への第一歩、「第22回遊水地ふれあいトライアスロン大会」がはじまった。

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・2013年5月20日 Facebook

2013渡良瀬ふれあいトライアスロン結果報告

レースが終わって帰宅し、洗濯をしたら、ドッと眠気が襲ってきたので、19時に寝てしまった。そして、喉が乾いて1時に起床。なかなか眠れないので、記憶が鮮明なうちに、レース内容を書き留めておこうと思う。

■ スタート前

5時起き。起きると同時に腹を下す。前日のひとりカーボパーティーでやりすぎたか。おにぎりをよく噛んで2個食べ、出発。

6時半、会場の第一駐車場に着くと、ブース販売していた宮塚さんに出会った。少しお話をしてから、受付を済ませ、トランジションにバイクなどを設置。トランジションでの行動をシミュレーションしながら、道具を配置する。

エントリーした頃は、制限時間の4時間以内に完走できればよかったのだが、それが3時間半を目指すようになり、今は「あわよくば3時間切り!」と思っている。なので、シューズは Cloudracerに決めた。バイク後の状況次第ではCloudrunnerにしようかと考えていたが、せっかくのデビュー戦、守らずに攻めようと心が決まった。

そしていよいよレーススタートという頃、わざわざ田原さんが応援に駆けつけてくれた。道場の仲間の岩本さんも。田原さんと握手をして、岩本さんに手を振って。俄然、力が湧いてきた。

■ スイム

片道375mの直線を2往復するコース。ずっと向こうにオレンジ色のブイが浮いている。こちら側にも同じブイ。2つの大きなブイを結ぶように、ロープが張ってある。真っ直ぐ進むだけなら、さほど難しくないはずと思っていた。

スタートと同時に人の波に巻き込まれた。頭をはたかれ、脚を押さえ付けられ、背中の上に乗りかかられる。背中の上に乗られたとき、半ば溺れるように沈んでしまった。思わず濁った水を飲んでしまう。ヘルシア緑茶のような渋い味。でも、ヘルシアと違ってカラダに悪そうだ。

上に乗っている人を蹴りはがすように、バタ足で逃れた。その後もしばらくは、上に乗られそうになるたびにバタ足で牽制。この必死のバタ足が良くなかったのか、そうこうしているうちに息が切れてきた。

プールの練習では、4回腕を掻くにつき1回息継ぎをしていた。なのに、今は2回につき1回でも苦しい。まだ最初の折り返し(375m)すらずっと向こうなのに…。プールの練習とはまるで違う状況に慌てそうになる。呼吸が苦しいから慌てるんだと思い、頭を上げる平泳ぎに切り替えた。大きく何回か深呼吸。それからクロールに戻す。なるべく練習通りにやろうと意識する。腕一掻きにつきキック1回。身体を回転させつつ伸ばす。身体がスーッと進むのを感じた。

ところが、やはり練習とは状況が違いすぎた。真っ直ぐ進んでいたつもりが、大きく流されていた。水に顔をつけると、濁った水のせいで何も見えない。自分の腕すら見えない。気付いたらコースロープに腕が絡まってしまった。すぐにコースロープから離れるように泳いだが、今度は蛇行してしまったようだ。近づいていたはずのブイが遠くに見える。

ここで泳ぎ方を少し変えた。8回腕を掻くごとに、頭を正面に上げて方向を確認する。この方法はよかった。ほどなく375mの折り返しブイに到着。最初にかなり消耗したものの、少しずつやり方が分かってきた。方向を確認しつつ、ぶつかる人をいなしつつ、息を切らさないようにゆっくり進む。

そしてやっと1.5kmを泳ぎ切った。手元のTIMEXによれば、42分17秒。予定より12分も遅い。

■ バイク

最初のトランジション、ウェットがなかなか脱げなくて困ったが、ほぼシミュレーション通りに終了。スイムの疲れで息が切れていたが、呼吸を整えながらバイク乗車位置まで走る。

スイムの遅れを取り戻すべく、最初から飛ばす。スタート直後の長い直線を、先日装着したばかりのDHバーを掴んで走る。通常の走り方で32km/hくらいなのが、DHバーを使うと34-5km/hくらいまで上がる。これには驚いた。

自分なりに飛ばしているのだが、右側を弾丸のようにすっ飛んで抜いていく人たち。「右、行きます!」と大きな声をかけてから抜いてくれるので怖くない。

なるほど、こうやるのか。と思っていると、前方に抜けそうな人が。「右、行きます!」と言って抜く。トライアスリートになった気分だ。

コースは1周10kmを4周回。最初の10kmを終えて、バイクスタート地点に戻ってきた。すると、なんとそこには熊谷さんが!俺に気付いて声をかけてくれた。一気にテンションが上がり、スタート地点前を40km/hくらいで走り抜けた。

First OD_3

…と思ったら、2周目に入っていきなり風が強くなってきた。ガクンとスピードが落ちる。35km/hくらいで巡行していたのに、27km/hくらいまで落ちてしまう。どんだけ空気抵抗高いんだ、俺のカラダ…。それでもスピードを落とさないよう、殊更態勢を低くして走っていると、3周目あたりから腰と首が痛くなってきた。はじめてのDHポジション、なるほどこうなるわけか。どうしたものかと考えたが、痛みは無視することにした。

風が強く、姿勢を起こしたらすぐにスピードが落ちてしまう。4周目、風に苦しめられながらも、自分なりに踏ん張る。それでもスピードはかなり落ちてしまった。バイクパート40km、おそらく1時間20分弱でフィニッシュ。

■ ラン

バイクから降りると、膝がカクカクして力が入らない。トランジションでTop SpeedとPowerBar Gelで補給。急いでCloudracerに履き替える。でも、手がよく動かず、うまく靴紐が結べない。焦らずゆっくりやってみたら、今度はうまくできた。

トランジション終了時点で、スタートから約2時間10分と確認した。目標の3時間まであと50分。5分/kmペース。練習ではいつも5-6分/kmのペースで走っていた。1.5km泳ぎ、40kmバイクに乗った後に走るのははじめての経験。キロ5分、いけるのか?田原さん、熊谷さん、岩本さんの応援をもらい、ランスタート。

やはり全身が重く、脚に力が入らない。気温が高く、息が切れる。でも、痛みはないので頑張って走る。最初は抑えて走り、脚が慣れてきたらペースを上げる作戦。最初の1km地点でタイムを確認。4分51秒!?ヤバいと思った。速すぎる。これじゃ後が続かない。

TIMEXと睨めっこしてペースを計算しつつ、なるべく冷静に走る。2.5kmごとのエイドでは、ちゃんと水分を補給する。最初の5kmは、25分22秒。後半5km、暑さで少しボーッとしながら走る。気付いたら、最後のエイドステーションだった。暑さを少しでも和らげようと、頭と首、脚に水をかけた。

そして、30mほど走った途端、右太腿の裏側が攣ってしまった。かなりの痛みで、思わず立ち止まってしまう。攣った場所を伸ばしていると、ずっと前にローキックでひどく蹴られたときと似た痛みだと思い出した。その痛みなら何とかなるだろうと、ちょっとニヤつきながらラン再開。立ち止まってしまったので、ペースを上げようとしたが、なかなかうまくいかない。

まだ1km以上残して、3時間になってしまった。残念な気持ちは不思議と湧いてこなかった。ゴール地点が見えてきた残り300m程のところに、熊谷さんがいてくれた。後ろから自転車でついてきてくれているのが分かった。すると、「駒田さん、ラスト!前の二人、抜いて!!」と檄が飛んできた。考える前にダッシュ。一人抜き、二人抜き。今度は田原さんが見えた。「駒田さん!前!閉めて!」トライスーツのジッパーを引き上げる。そして、ゴール。

3時間7分37秒。目標の3時間には届かなかったが、全力を尽くしたので満足してる。やっとトライアスリートの仲間入りができたかな?

次は7/14(日)、第一回葉山オープンウォータースイム。海を3km。今のレベルじゃ溺れてしまう。トレーニングしないと!

ストロングマン、アイアンマンにはまだまだ遠いと思い知った。でも、頑張って、きっとそうなろうと思う。応援、ありがとうございました。Facebookの応援、間違いなく力になりました!

First OD_1

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こうして、俺にとってはじめてのオリンピック・ディスタンスが終わった。小さなローカル大会かも知れないが、俺にとっては大きな意味を持っていた。宮古島にエントリーするための資格を得たからだ。

第4話「鎌倉山の変」に続く

 - 宮古島トライアスロン2014