廃墟。

   

夕涼み

前回「リーダーとは。ハマのダンディズムへの道」に戻る

 

イベントの仕事を終え、そのまま走れる格好のまま外に出た。久しぶりにiPhoneで音楽を聴きながら走っていると、平井堅の歌が流れてきた。

「君の鼓動は君にしか鳴らせない」

聴き終わってからもう1回リピートし、最近引っ越した家に戻る。屋上に上がって涼む。夕焼け空がきれいで気持ちがいい。そんな何でもないことで幸せを感じられるようになった。

夕涼み

さっき聴いた曲が、少し前のことを思い出させる。5年前のことだ。

 

2012年7月7日(土)

実家に行く日が来た。最寄駅で母と妹と待ち合わせ、一緒に向かうことになっている。家に残ったいるものといらないものを仕分けるのだ。気が重い。

鎌倉市にあるマンションから1時間半くらいかけて地元の駅に着き、予定通り母と妹と合流した。お互いに何もないかのような笑顔で。そして、普段通りの足取りで、何十年も歩き慣れた家路を歩く。行く先は馴染み親しんだ場所、のはずだ。

実家の敷地に入ると、伸び切った庭木が見えた。砂利が敷き詰められていたはずの庭は、雑草に覆われている。母が育てていた花壇の花は、もうどこにもない。俺が昔使っていたダンベルが錆びて転がっている。

玄関のドアの鍵を開けて中に入った途端、異様な雰囲気を感じる。一瞬の後、それは空気のためだと気がついた。人の住まない家の空気。

 

(これが俺の家…?)

 

司法浪人をしていた頃、様々なことに押し潰されそうになっていたダメな俺を受け入れてくれた温かい家。笑いながらテレビを見たり、夜遅くまで家族と語り合ったり、夏には好きなサザンのCDを聴きながら家族麻雀を楽しんだ家。居心地が良すぎて結婚するまで住み続けた、大好きだった家とそこに住む家族。ずっと続くと思っていた場所。

 

「家は場所のことじゃない。人の心のつながりのことだよ」

 

つい先日、母に言った言葉を自分に言い聞かせる。ここは「容れ物」にすぎないと。それでも、変わり果てた大事な場所の様子に動揺する。

 

(廃墟……)

 

ふと、そんな単語が頭の中をよぎった。

廃墟。そうだ。庭を見た瞬間そう感じた。ピッタリな言葉を見つけてしまった。

ゾッとする。後ろにいる母と妹には動揺を悟られたくない。

 

次回「生活の終わりの臭い」に続く

※ いつか書こう書こうと思っていた話です。お付き合いいただければ嬉しく思います。
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