ポセイドン再臨 – 第3話「ポセイドン、敗北」

      2016/10/13

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第2話「お茶の間ゲストハウス」に戻る

サムライが駆る騎馬、ポセイドンが駆るスワン。スワンの上からバッタバッタと魚を獲る、そんなイメージを頭に浮かべる。

俺はスワンを引きずって海に浮かべ、水面からひらりとスワンに飛び乗ろうと試みる。しかし、空気の詰まったスワンの広い背中に「ばいーん」と弾き飛ばされ、そのままもんどり打って海に落ちる。2回ほどチャレンジしたのだが、結果は変わらない。海に浮かんだスワンは想像以上に高さがあり、飛び乗るのは難しい。

ひらりと飛び乗るのが無理ならば、今度はスワンの羽にしがみつき、よじよじと登る。なんだか当初のイメージと随分違う。

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ようやく背中に乗ったのだが、よく考えたらどうやってコイツを動かしたらいいのだろう。背中にまたがった状態だと、両足は水面に触れるのが精一杯。

「一応、こんなものがあるのですが…」福岡さんが渡してくれたのは、スワンの足ヒレをイメージさせるような黄色のオール。試しにそれで水を掻いてみたのだが、スワンはくるくると回ってしまい、どこにも向かってくれる気配がない。第一、これを使えばモリを振るうことはできない。

……騎乗スタイルは諦めよう。所詮、俺みたいなもんは足軽スタイルがお似合いなのだ。スワンを海から引き上げ、福岡さんに丁重に返却する。「やっぱり。前のオーナーも、『一回使ったら十分』と言って置いていったんです」と言っている。野良スワンにするのは忍びないが、前のオーナーの気持ちもよくわかる。

気を取り直し、裸一貫で海に飛び込む。海藻はかなり多いのだが、東京から車で1時間半とは思えないほど、勝浦の海は美しい。新島に勝るとも劣らない透明度だ。小さいのから大きいのまで、魚もたくさん泳いでいる。

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以前の俺であれば「きれいだなー」で終わっていたところだが、新島で覚醒した今の俺は「こいつら食える」としか思えない。午前中、いきなり3匹を仕留めて福岡さんに納品する。ポセイドンとしてのスキルが確実に上がっているのを感じる。

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午後も引き続き海を漂っていると、圧倒的に大きな2匹のつがいを発見した。午前中に獲った魚の倍はある。

しかし、奴らはその大きさに似合わない細心さを持ち合わせていた。銛を構える気配はおろか、視線を向けるわずかな気配すら察知し、すぐに逃げ出す奴らのニュータイプぶりに、内心舌を巻いていた。

奴らに視線を向けたら、銛を構える間もなく逃げられる。ならば視線を向けずにやるしかない。遠くの山をぼんやり見るような、見るでもなく全体を見るような、武道における技のひとつ「遠山の目付 (とおやまのめつけ) 」を使う。

足ヒレをバチャバチャするなどもってのほかなので、奴らがいそうな場所を漂って待ち伏せする。視界の端に動くものがある。慌てるな、視線を向けたら負けだ。視線は動かさず、視界の端の動くものをぼんやりと見る。銛をゆっくりと引き絞る。

意識的に呼吸の数を抑え、相手の気配のみを探る。もうすぐ視界の真ん中に出てくる。あの2匹だ。その2匹にではなく、その2匹のいる場所全体に意識を向ける。その意識の円の中心に向け、何気なく銛を放つ。

水中なのに「バツン!」という音が聞こえた。まるでスローモーションのように、2匹の内の1匹の腹に銛が当たったのを見た。しっかりとした手応えもあった。しかし、そいつは身をよじって銛から逃れ、2匹とも一瞬で俺の視界から消えた。

残されたのは、あたりの海面に漂う鱗のみ。敵ながら天晴れ。俺の負けだ。

第4話「ファミリーレストラン こだま」に続く

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 - 海の男