海の男の話 – 第5話「ポセイドン降臨」

      2016/10/07

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第4話「ゆったり新島の朝」に戻る

午前中のゆったり活動のおかげか、少し元気が出てきた。午後は少し動いてみようと思い、前浜海岸で軽くひと泳ぎしてみる。

体調は万全とは言い難いが、海にいるうちに気がついた。海を漂っていると、少しずつ回復してゆくことに。透明な海で魚を眺めつつぷかぷかしていると、こういうのんびりした海の楽しみ方もあるのかと新鮮な気持ちになる。

しかし、海に浮かんで魚たちと戯れているうち、ふと思った。「こいつら食えるんじゃないか」と。あわよくば夕食のおかずになるのではないか。島寿司にしてしまえるのではないか。

思い立ったらすぐ行動。近所の商店でモリとシュノーケルを借りる。モリもシュノーケルも、1日500円ほどで借りられた。

すぐにでも漁に出たいところだが、海にしばらく浮かんでいたため、身体が若干冷えている。ちょっと暖をとるため、昨日みんなから聞いていた露天風呂湯の浜露天温泉に行くことにした。

湯の浜露天温泉は、新島港のすぐ近くにある温泉施設だ。水着着用の混浴風呂で、入浴料は無料パルテノン神殿と見紛うばかりのド派手なデザインを誇る。ここは新島だろう?ギリシャじゃないだろう?どうしてこうなった。

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モリを持ったまま湯の浜露天温泉に入って行くと、後ろからまどか「どうみてもアレw」とニヤついている。一体どう見えるというのか。写真を撮ってもらい、確認してみる。

三又の鉾(というかモリ)を掲げつつ、ギリシャ神話的かつパルテノン的建物に侵入する大男。これはアレだ。どう見てもアレだ。

「どうみてもポセイドン」

「でしょw」

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パルテノン神殿で清めのお湯に浸かり、準備万端となった俺は、意気揚々と前浜海岸に戻った。仙人世界メガネ3人衆はスイムトレーニングをしているようだ。俺のモリを目ざとく見つけたカズが近づいてくる。

「駒田さん、なんですそのモリw」

「おかずを獲ろうと思ってな( ̄— ̄)」

Onスイムキャップ、シュノーケル、足ヒレを装備しつつカズに説明する。カズは期待に満ちた眼差しでiPhoneを構えている。何だ、俺に何を期待しているのだ。

「ダイブw そこからダイブしてww」

カズは目の前に伸びる桟橋を指差している。この俺が高所恐怖症と知っての狼藉か。しかし挑戦からは逃げられない。

「……や、やってやる、見てろよオイ!」

「早く早くw」

「ぬうう……おうりゃああぁぁ!!」

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飛んで即後悔。意外と高い。内臓がグッと上がる感触が。

「……ぎゃあああぁぁぁぁ!!」

周囲の釣り人が振り返るレベルで絶叫しつつ、真っ直ぐ前浜の海に吸い込まれてゆくハマのダンディズム。

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半分チビりながらも無事着水。カズは上の方でゲラゲラ笑っている。おのれ、三又の鉾のサビにしてくれようか。

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入水してすぐに「海のギャング」ことウツボを獲ることに成功する。ベタとは知りつつ、思わず「とったどー!」の叫びを上げる。すると、アスリート3人衆も商店に走って行った。どうやら、奴らも本気になったようだ。

モリを借りて戻ってくるやいなや、仙人・遠藤はいきなりカワハギを仕留めた。俄然、盛り上がる俺たち4人。カワハギは確かうまいはずだ。

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しかし、カワハギを仕留めてからは釣果のない時間が過ぎていった。それから数時間、海中で熾烈な戦いが展開される。俺たちをあざ笑うかのようにヒラリヒラリと舞う魚たち、日が傾くにつれて徐々に奪われていく体温。ひとり、またひとりと海の藻屑と消えてゆく仲間たち。

一方、午前中十分に栄養を摂り、温泉で身体を十分に温めていた俺は、ひたすら海中を睨み続けていた。まさに日が沈もうとする時間になる頃、浮き輪でバチャバチャ水中を観察していたまどかが、シュノーケル越しに声を上げる。

「ふぐいたーー!!」

このフグ、先ほど仙人が獲り逃した獲物であった。あまりのデカさに腰が引けたという。ここで会ったが100年目。狙いを定め、モリを引き絞って放つ。

表面に当たった瞬間、フグの装甲の硬さに驚く。弾かれる前に、棒術の要領で思い切り突き出す。手応えあり。フグを海面から出すと、驚いたことに「ぷくーっ」っとみるみる膨らみ始めた。怒っているのか?元々大きかったのに、3倍くらいに膨れ上がるフグ。

怒ったままのフグをモリにぶら下げて陸に上がると、岸からドッと笑いと歓声が上がった。見知らぬ外国人から「グレイト、フォトプリーズ」と称えられ、記念撮影に応じる。

こうして、俺は仲間たちから名実ともに新たなあだ名を拝命することとなった。三又の鉾を自在に振り回す海神「ポセイドン駒田」。謹んでお受けいたします。

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最終話「元気復活、次の旅へ」に続く

※ 「ハマのダンディズム」よりも「ポセイドン」の方が早く広まったことに若干納得がいきません。何故でしょうか。下の応援バナーのクリックをお願いします。
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