海の男の話 – 第2話「海ダッシュと釣り仙人」

   

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第1話「ぼくになつやすみを」に戻る

新島は東京から南に約160kmに位置する、東京都所属の離島だ。

サーフィンが盛んな場所であり、トライアスリートの間では新島トライアスロンで有名でもある。TEAM TRIATHLON BLUE-TRAIN (ブルトレ) の仲間たちは、恒例行事としてそこに参戦しているのだが、俺はまだ出たことはない。だから、今回が俺にとって初新島となる。

竹芝桟橋から高速船で約2時間半、俺たちは新島に到着した。新島トライアスロンに出た仲間たちがFacebookに投稿した「ようこそ新島へ」と描かれた大きなパネルが見える。素朴な雰囲気が漂う、穏やかな場所だ。

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港で「さてこれからどうしようか」と相談していると、1台の車が迎えに来てくれた。ナカムラケンタさんという、笑顔が爽やかなイケメンだ。ナカムラさんの車に乗り込み、港から北に1km弱ほど離れた「前浜海岸」に向かう。

今回の宿は、前浜海岸を目の前にしたところにあるらしい。その宿「Common House Niijima Row」は、遠藤さんやナカムラさんたちが共同出資し、かつて陶芸家がアトリエ兼住居として40年使って来た家に手を入れ、新島好きな仲間が集う場所にしたものだという。無骨さと懐かしさと洒落っ気が共存した、「いかにも遠藤さんぽい」と思わせる場所だ。

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宿に荷物を置き「ゴロゴロしようか」と少し思ったが、目の前にある海が見たくなってきた。ゴロゴロするのは浜でもいいだろう。早速水着に着替え、前浜海岸に行ってみる。

まず驚いたのは、海の水の美しさだった。宮古島に匹敵する透明度と言っても過言ではない。

「何度来ても最高ですね!」

海を見るカズが言う。遠藤さんと玄武くんも嬉しそうだ。彼らは何度も新島に来ているリピーターなのだが、来るたびに感動があるらしい。

浜辺から少し離れたところにある人口の浮島まで、みんなで泳ぐ。遠藤さんの息子の要 (かなめ) もガシガシ泳ぎ、浮島からジャンプしたりして楽しんでいる。なんという「なつやすみ感」であろうか。これだ、俺が求めていたのはこれなのだ。俺も負けずに海にダイブする。

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小一時間ほど泳いでいると、「そろそろ腹減ってきましたね〜」と玄武くんが口にする。ただ、そのまま海から上がることはなさそうだ。アスリート3人組は、4-50mほど先に浮かんでいるブイを指差している。どうやら、あそこまでの往復ダッシュのタイムを取ろうということらしい。

「がんばってねー (棒」
「駒田さんもやるんですよ!」

3人から総ツッコミを受けてしまう。仕方ない。90mダッシュくらいなら、まあなんとかなるだろう。

遠藤、カズ、玄武はいずれも55秒-1分ほどで戻ってきた。水泳のタイムの基準は知らないが、かなり速い気がする。「次、駒田さんですw」とカズがニヤニヤしている。おのれ、ハンデよこせ。

「よーい…スタート!!」

遠藤さんの掛け声で浮島から飛び込み、とりあえず全力で泳ぐ。アイアンマンのときは「ひたすら疲れないように」ということだけ意識して泳いだが、今回は全力で腕をぶん回し、キックしまくる。ブイを回って浮島に近づき、タッチすると歓声が上がった。

「結構速いですよ!!」

結果は1分10秒くらい。以前100m x 38本の練習をしたときは2分10秒サークルだったので、それに比べれば確かに随分速い。でもこれじゃ息が切れすぎてダメだ。「それをずっと続ければアイアンマンのスイム1時間いけます」と怖いことを言っている人たちは無視しよう。

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全力で泳いだら疲れてしまった。「何もしない」がテーマだったはずなのに、いきなり雲行きが怪しい。とりあえずここから目標へキャッチアップすべく、昼メシを食ってから昼寝をする。

昼寝から目覚めたら、みんなは港まで釣りに行こうとしていた。釣りならフィジカル的に追い込まれることはないだろうと思い、俺もついていく。

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船が発着する港であっても、やはり海は綺麗だった。覗き込むと、海中の魚やイカの群が見て取れる。釣り人たちは、その群の中に釣り糸を垂らすのだが、意外とうまくいかない。何度かチャレンジしているうちに、カズと玄武くんは早々に諦めて寝っ転がりだした。

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しかし、遠藤さんだけは諦めない。ケアンズ以降伸ばし続けた髭、いつもの上半身裸、そして無言で釣り糸を垂れる彼の姿はまさに仙人

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俺は、そんな彼らの姿をボーッと眺めたり、あるいはテトラポッドの上をよじ登ってみたり、気の向くままに過ごした。テトラポッドの頂上に登ったときは、自分が高所恐怖症だったことを思い出して後悔した。

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数時間に渡る釣り仙人の粘りも虚しく、大した釣果は得られなかったのだが、それでもテーマ通り「何もしない」ができた俺は十分満足であった。

しかし、一つだけ気になったことがあった。ここまで魚が見えるのであれば、何か他の手段で獲れるのではないだろうか。何か方法はないか、何か…。

おっといかん、何もしないのだった。ぼくになつやすみを。

第3話「世界のメガネ、メガネの世界」に続く

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