今泉奈緒美の話。

      2016/12/14

%e3%83%8a%e3%82%aa_%e3%82%af%e3%83%a9%e3%82%a6%e3%83%89%e3%83%95%e3%83%ad%e3%83%bc

前回「レジェンド・稲田さん、Onジャパンご来社」に戻る

2016年10月4日(火)、俺たちの最速不動産王・遠藤啓介がアイアンマン・ワールドチャンピオンシップに旅立った。

 

20161004_%e6%97%85%e7%ab%8b%e3%81%a1_1

 

その日、俺たちは、もう一人の仲間の旅立ちの始まりを見届けようとしていた。今泉奈緒美。かつて、日本人女子トライアスリート、最強だった一人。

彼女は、トライアスロンをもう一度やってみようか、やってみたい、という段階にあった。ハワイを目指して「モーニングマン・2ndシーズン」(朝4時からバイク180kmを乗る荒行) を始めた遠藤さんに付き合い、一緒にバイクに乗り始めた頃から、それを口にし始めていた。

20161004_%e6%97%85%e7%ab%8b%e3%81%a1_2

 

俺たちはOnジャパンのオフィスでお茶を飲みながら、ナオの話を聞いた。

思えば、こうして彼女とお茶を飲んでいるというのも人生の不思議な巡り合わせを感じる。TIMEXの仕事をしていた頃、宮古島で優勝した彼女の姿を遠くから見ていただけだったのだから。

人生の巡り合わせに少し思いを馳せていたら、彼女からも「人生」という言葉が出てきた。

 

「人生この先こうなるだろうな、っていうイメージが常に、なんとなく自分の中にあるんです」

 

すごいことだと思う。俺など、自分の意思で動いてきていたつもりで、振り返って見てみれば、何かの流れの中で生きてきただけなようにも思える。そして、自分の人生がどこにどう向かっているのか、未だに分かっていない。目指したいものはあるのだが。

ナオの力強い言葉を聞き、マッサが乗り出すようにして聞く。

 

「人生のビジョンが先にあって、それに向かって物事に取り組んで生きていっている…という意味?

 

おれ、結構いいインタビュアーじゃねぇ?w」

 

うん、マッサなかなかいいよ。これはもしかしたら、一流の人間に話を聞けるまたとない機会なのかも知れない。そのまま続けてくれい。

 

20161004_%e6%97%85%e7%ab%8b%e3%81%a1_4

 

でも、俺だって聞いてみたい。

 

「始める前に、トライアスロンで勝てるだろうというのがなんとなく見えていたということなの?」

 

「はい。やったこともないのに(笑)

 

あのスポーツは自分に合ってるだろうな、あれをやれば強くなるだろうな、と思ってトライアスロンを始めたんです。

 

それで、お母さんに『トライアスロンやりたい』と言ったんです。それまでは、お父さんと同じようにテニスをやってたんですけどね」

 

ナオによれば、彼女のお父さんは若い頃テニスをやっていたのだが、道半ばで辞めてしまったらしい。

彼女は子供の頃から、折に触れてお父さんから「中途半端に辞めて後悔した」と聞いて育ってきた。だから、幼い頃から「中途半端に辞めたら後悔する」ということを知っていた。

テニスをやっていたナオが高校時代にやろうと決めたトライアスロン。プロトライアスリートになり、引退したのは2008年。その年のアイアンマン・ハワイを最後に現役を退いた。

ただ、彼女の中では、どこか違和感があったらしい。その時点で辞めるということに対して。

 

「トライアスロンを辞めたとき、辞めようとしているまさにそのときですら、『ああ、私はきっと後悔する』と知っていたんです。

 

もしあのとき、自分の中で『やりきった!』と思えていたら、何も後悔はなかったです。

 

それなのに、ハワイでああいう形で辞めたことで、しばらくは…数年くらいは…『このまま人生が終わってしまえばいい』なんて思ってました。子供だったんですね」

 

最後のハワイは15位か16位だったと思う、と彼女は言う。ハワイではいい成績を出せたと思ったことはないそうだ。

宮古島でも、アイアンマンジャパンでも優勝した。それでも、自分の中でやりきったとは思えなかった。

ただ、それから数年経ち、「トライアスロン、もう一度やらないと絶対に後悔する」と思うようになってきた。自分の中で「リミットが近い」と思ったらしい。

リミット?リミットというのは、何のことだろうか。

その言葉がナオから出たとき、俺もマッサも玄武もみんな首を傾げた。

 

「これは、ナオの勝手な想像ですよ。

 

自分の中では、いつかきっと子供を授かるときがくる…と思ってるんですけど。

 

昔やり残したことを乗り越えないと、きっとそうはならないと思っているんですよ。

 

ちゃんと乗り越えるべきものを乗り越えないと、順番を踏んでいかないと、次がこないような気がしているんです」

 

20161004_%e6%97%85%e7%ab%8b%e3%81%a1_3

 

全員が「すげぇ!」と叫んでのけぞる。この人は、確信をもって人生を歩んでいる人なのだ。きっと。

「優勝しなきゃ、って思うんですか?」と玄武が聞く。

 

「ううん、優勝じゃなくてもいいけど、自分の中で『やりきった』と思えればいい。目標に向かって努力できれば」

 

なんとなく彼女の言いたいことの意味が分かってきた。「やりきってなかった、っていう気持ちがそんなに強かったの?」と聞いてみる。

 

「はい、強かったです。もう全然やりきってなかったです」

 

「日本最強の女子、っていうことでも…やりきった感はなかったの?」

 

「自分の中で目一杯やって、それが例えば日本5位という結果だったなら、それならそれで良かったんです。

 

たまたま私は日本で1番だっただけで。何位でもいいんですよ。

 

自分の中でやりきって、『私の実力は、私の持っているものはこれなんだ』と思えたなら、気持ちよく辞められました」

 

「ハワイで15位というのは、出し切ったものではなかったんだね」

 

「ハワイでは…1回も『出し切った』と思えたものはなかったですね。

 

満足したことは、いいレースをしたと思えたことは……」

 

一瞬考え込んだ後、「本当に満足したと思えるくらいいいレースをしたことは、実はなかったのかも」とナオは続けた。

「おれなんか、三回に一回くらいは『いいレースした!』と思っちゃうんだけどw」とマッサが言った途端、全員爆笑する。

 

「そういうのはなかったですね(笑)

 

多分、ビビってたり、考え方が子供だったり、そういうことだったのかも知れません」

 

笑いを獲り、場の雰囲気を柔らかくしたマッサが、「再確認したくなったのかな?自分が何のためにやっていたのか…とか」と続ける。

 

「ですかね。昔は楽しめませんでしたけど、今は…」

 

思わず俺は聞いてみた。

 

「今は、楽しくやれるんじゃないかと思った?」

 

「ですかね。それにほら、果たさないと次がない、っていう」

 

「順を踏まなければ」という使命感と、その中でも「楽しみたい」という素直な願望とが、彼女の中で形を成してきたということかなと思った。

彼女が「楽しみたい」と口にしたのを聞いたマッサがニヤリとする。

 

「でもね、練習のとき超楽しそうだよw」

「今はいたぶる相手がいるしなw」と俺も付け加える。

「タレる人がそばにいると楽しいんですよねw」と玄武。

 

全員、マッサを見る。

 

「ああ、おれか。。。」

 

再び爆笑。マッサ、いい仕事してるな。

 

 

「その『楽しむ』ってのは、すごく大事なことだったんだろうね」

 

「ですね。それに、今は孤独は感じないですね!

 

もしかしたら、あのとき辞めたのは、仲間とのこの出会いがあって、

 

『今』を楽しむためだったからなのかも知れません。

 

だから、今はもう悔やんでいないです。

 

あの頃は、トライアスロンの「ト」の字も見たくなかったですし、情報から離れようとしていましたけど。

 

今は、そうじゃないです」

 

ナオの話を聞いてから1ヶ月くらいして、彼女はFacebookにこんな投稿をした。

 

—————————
トライアスロンのトの字も聞きたくなかった日から早8年。
こんな日が来る事を心の隅で待ち望んでいた。

自分の描いた人生プラン通りにする為に、そろそろ逃げた事に立ち向かわなくてはいけないタイムリミットが近付いて来た。

後悔する人生だけは自分らしくない、もうどうでもいいか〜っと、二つの気持ちがあったけど、良い未来にする為に、やっぱり逃げてきた壁を乗り越えたいと思います。復活とかではなく、弱い自分から逃げた事にただ立ち向かいたい。

一度っきりの人生、楽しんだ者勝ち!っと言うならば、身体を酷使する練習より、出張の多い夫の側にいたほうが幸せなのではないかっと思ったけど、夫がいつも全力で頑張っているから、自分も努力して頑張りたいと思った。自分にとって尊敬出来る誇らしい夫、少しでも夫と肩を並べたい。

僕と楽しい事をいっぱいしよう、っと頑張れと一回も言わずに見守ってくれた夫、逆に頑張れと喝を入れて励ましてくれる良き最高の仲間達に囲まれやっとこんな日がやってきました。

さて、レース後に何を感じるのか?

それは本当に謎!!!

生涯スポーツとして夫婦でトライアスロンを楽しめたらなっと思います。

8年振りのレースは1月27日、70.3ドバイに決定!

%e4%bb%8a%e6%b3%89%e5%a5%88%e7%b7%92%e7%be%8e_%e3%83%88%e3%83%a9%e3%82%a4%e3%82%a2%e3%82%b9%e3%83%ad%e3%83%b3%e5%8f%82%e6%88%a6%e5%ae%a3%e8%a8%80
—————————

 

本当に嬉しい投稿だった。ファンの一人として、友達の一人として、彼女をこれからも応援したい。

ただ、俺も彼女から応援されているようだ。「ちゃんとやりきれ!」と。彼女がクラウドフローを履いている写真を見て、勝手にそう感じた。

 

%e3%83%8a%e3%82%aa_%e3%82%af%e3%83%a9%e3%82%a6%e3%83%89%e3%83%95%e3%83%ad%e3%83%bc

 

次回「プチモーニングマン」に続く

※ ナオのレースが本当に楽しみです。一緒に応援してくださる方は、下の応援バナーのクリックをお願いします。
にほんブログ村 その他スポーツブログ トライアスロンへ
にほんブログ村

 - ブログ