リーダーとは。ハマのダンディズムへの道。

      2017/09/30

雲を集める旅2017

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‘If your actions inspire others to dream more, learn more, do more and become more, you are a leader’ – John Quincy Adams

「もしあなたの行動によって、他の人がより多くの夢を持ち、より多くを学び、より多く行動し、より良くなろうとしたら、あなたはリーダーである」 – ジョン・クィンシー・アダムス

John Quincy Adams

 

この名言の紹介を皮切りに幕を開けた、リーダーシップ論に関するワークショップ。その場では、古今東西の様々な名言が紹介された。かつてのアメリカ大統領からスティーブ・ジョブズ、果ては聞いたこともない東洋の偉人まで。

ワークショップ会場の部屋の壁に貼り出されたそれらの名言を読みながら、部屋をぐるりと歩いて回る。どれもなるほどと思わされる。

「リーダーとは何か?」「理想の上司とは?」という問いは、おそらくビジネスパーソンなら一度は必ず考えたことのあるものだ。もちろん俺も考えたことがある。

オン・ジャパンを作る前に所属していた会社には、様々なタイプのリーダーがいた。いい人も癖の強い人もいた。しかし、いずれもリーダーの資質を持っている人たちだったと今では思う。

 

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1. 腹が立つのに憎めないリーダー

最初に巡り合ったリーダーは、当時の俺には全く理解できない人だった。自分の欲望にひたすら忠実で、それを叶えるために人を利用しているフシすらあった。「メリット」「お買い得」という言葉を心の底から愛しているようだった。

その人の仕事ぶりはお世辞にも丁寧とは言えず、自分が少しでも面倒臭いと思ったことは、華麗に他人に丸投げしていた。自分ができないことは徹底的に人任せにしていた。エクセルの表計算ひとつまともにできなかった。

しかし、人を笑わせることに圧倒的に長けていた。その人を取引先に連れて行くと、あっという間に打ち解けてしまう。腹が立つことが多々あるのに、どこか憎めない。そして、どこか「持っている」のだ。

傍目にはどうしても適当にやっているようにしか見えないのに、最終的に帳尻を合わせる。奇跡的なタイミングで引き合いがあったり、商談をまとめたりする。

「駒田くんね、運も実力のうちだよ」と言い切るだけのことはあった。今でこそその人に対して違う思いを持っているのだが、「自分は持っていない」と思っていた当時の俺にとって、どうしても認めたくない人でもあった。

 

2. 真面目で辛そうなリーダー

次に出会ったリーダーは、俺に営業としての実務を教えてくれた人だ。市場に詳しく、取引先の情報に通じ、何よりもチームメイトに優しかった。

真面目に丁寧に仕事に取り組むその姿勢には、いつも感銘を受けた。不誠実さを嫌い、常に正しくあろうとしていたように見えた。理不尽な命令が上から降りてくると、会議の席でむっつりと黙り込むか、静かに反論を試みた。決してチームメイトにその役割を投げたりしなかった。

しかし、弁が立つとはお世辞にも言えなかったその人は、上からの評価が芳しくなかった。上からの扱いが冷たくなるにつれ、下の俺たちはヤキモキした。「いい人なのに」「よく分かっている人なのに」と心配ばかりしていた。そして、その人はいつも最後まで職場に残り、いつも少し辛そうに見えた。

 

3. 臆病な圧政者としてのリーダー

上に挙げた2人は、いずれも課長クラスであった。トップから落ちてくるものと、現実との狭間で苦しむ役割だったのかも知れない。特に、2人目の人にとって、そういう色合いが顕著だった。

俺がその会社に入社したときからしばらくその部署を掌握していた人は、まさしく「トップダウンで命ずる」タイプの人だった。会議にその人が登場すると、誰もが右往左往した。その人の一言で会社にいられなくなった人はいくらでもいる。

しかし、ただ声が大きい暴君だったわけではない。一時期、その人が直属の上司だったから分かる。パワーポイントやエクセルの資料に対し、尋常ではない程の細心さをもってあたり、少しでも矛盾点があれば容赦なく指摘された。フォントのサイズ、フォントの不一致、全て徹底的に検討していた。

「駒田くん、こんな文字ばかりの資料を誰が読むんだ!パワポは徹底的にシンプルにしろ!見栄えを良くしろ!見栄えこそが全てだ。裏付け資料はエクセルで徹底的に作り込め。数字が弱いマーケッターなんて必要ない。エクセルを徹底的にいじれ。そのうち手に取るように数字が分かる」

誰もが恐れたその圧政者は、きっと実は臆病な人でもあったのだ。その人よりもさらに上の人の覚えをどうめでたくするか、それに徹底的に腐心していた。必要とあれば、突然海外に行って上役に工作することも辞さなかった。

口癖は、‘Perception is reality’ (どう見られているかが全て) だった。下からどう見られているか、きっとそんなことは百も承知だったのだろうと今では思う。

人としては嫌いだった。しかし、俺の今の仕事に大きな影響を与えてくれたひとりでもある。

 

4. 背を押してくれたリーダー

俺が最も感謝しているリーダーのひとりは、俺がOnの仕事に取り組むキッカケを作ってくれた。

「Onをやるか会社を辞めるか」と俺に迫った上司とのミーティングの席に、その彼もいた。ちなみに、俺にそう迫った上司は、上の3人の誰でもない。控えめに言っても、その上司にリーダーの資質は皆無だった。

話が逸れた。そのミーティングが終わったとき、半ば呆然としていた俺に彼はこう言った。

「駒がTIMEXから離れるのは正直痛いけど、これは駒にとっていいチャンスなのかも知れないよ」

彼がそう言うのならやってみよう。そう思わせる何かが彼にはあった。そして、彼はその後も何かと気にかけてくれた。彼を始めとするTIMEXチームの仲間たちと一緒に食べる昼ごはんが、当時の俺にとって、あの会社での唯一と言っていい楽しみだった。

あの人がいたから会社に来るのがまだ楽しいと思えた。あの人がいなかったら、Onの仕事は引き受けていなかったかも知れない。当然、カズともヤスコとも出会わず、オン・ジャパンも存在していない。

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自分にできないことをできないと認めて躊躇なく人任せにできること、不誠実さを嫌い筋を曲げないこと、他者からどう写るか自分を客観視する細心さと臆病さを備えること、仲間の背を押して見守れる優しさがあること。それらは単体では成り立たないが、いずれもリーダーとして大事な要素に思える。

自分なら全部できる、自分が一番できる、そう考えていた頃には何もできなかった。誠実さはリーダーの最も大事な資質だと確信している。自分を客観視して時に笑い飛ばすことが、臆病な自分がリーダーとして負った重荷を軽くする。仲間を信じて「そこに居る」人は、理屈抜きに頼もしい。

漠然とそんなことを考え始めた頃、俺はキャスパーやオリヴィエから大事なことを教わった。彼らが教えてくれたことは、とてもシンプルだった。「夢に生きること」「より大きな夢を見ること」この2つが彼らに教えてもらった最大の宝物だと思う。彼らは楽しさと夢を広げる人たちだ。

「おまえは何がしたいんだよ!俺は晩酌がしてぇんだよ」

5年前に俺をどん底に叩き落し、それから勇気のカケラを呼び起こしたあの言葉。キャスパーやオリヴィエにもらった宝物。かつて出会ったリーダーたち。それらを合わせたとき、俺にとっての真実が見えてきた。

だから、俺はワークショップの最中にこう考えた。多くの言葉はいらない。資料も考え方もシンプルに。自分にとって大事なことを凝縮したらこうなった。

 

‘A leader is a dealer of hope, courage, and dream’ – Hiroki Komada

「リーダーとは希望を、勇気を、そして夢を広める者のことだ」 – 駒田 博紀

 

正解かどうかは知らない。そもそも正解などないかも知れない。ただ、これが今の俺にとっての理想像。それを正解に近づけるのは、これからの俺の行動だ。

そんなことを考えながら、スイス出張の最後の朝、俺は思い出の場所を走った。ハマのダンディズムへの道はまだ遠い。

雲を集める旅2017

 

次回「廃墟」に続く

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