強さを勘違いし始めた20代。

   

ティンベーの形

前回「休んでもいい。心の中で辞めなければいい」に戻る

 

拳生会に入門してから15年が経っていた。

人並みになりたいと思って始めた空手で、気がつけば俺はそれなりに強くなりつつあった。

それに気がついたのは、出稽古などで他の道場に行ったとき、あるいは合宿で他支部の練習生と稽古したときだ。

かつて俺が黒帯たちを「超人」扱いしたように、彼らも俺をそう扱い始めた。組手したとき、形を見せたとき、他の人の俺を見る目が明らかに以前とは違っていた。

ティンベーの形

 

その年の夏合宿で、俺は昇段試験を受けた。相手は格上。だが、審査の前、藤原先生にこう言われた。

 

「ガムシャラにやるな」

 

それは、力押しするなということだと理解した。逆に言えば、力押しすれば圧倒できてしまうことを意味していた。

 

「はじめ」

 

開始の合図を聞き、俺はゆったりと構えた。相手の動きをよく見る。腕の動き、足さばき、目線の動き。それらひとつひとつを見るのではなく、全体としてぼんやりと見る。見るともなく全体を見る。

相手はやりづらそうだった。牽制で何かの技を出そうとしてきたが、牽制だとわかっているので俺は動かない。ただ相手を見続ける。

 

すると、不思議なことが起きた。

 

相手が左脚で前蹴りを出してくることが、事前に分かったのだ。どういう軌道でそれが飛んでくるか、まるで手に取るように分かった。

余裕を持ってそれを体捌きでかわし、相手の左脚をすくい、軸足を刈る。倒れた相手に寸止めで正拳。そういう流れになることが、相手が蹴る前に確信できていた。

 

「やめ」

 

その審査で、俺は五段に昇段した。俺は強くなったと思い込んでいた。

拳生会本部

 

次回「強さとは。自信とは」に続く

 

※ 強くなったと勘違いした若かりし頃。下の応援バナーのクリックをお願いします。
にほんブログ村 その他スポーツブログ トライアスロンへ
にほんブログ村

 - ブログ, 空手