岩本能史の薄底シューズ論とOn。

      2018/08/30

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俺がまだ前職に入ったばかりでTIMEXのセールスやマーケティングを担当し始めた頃、つまり10年以上前のことだ。

その頃、「TIMEX RUNNING CLUB (TRC)」というものが、先輩のマーケティング担当者によって組織された。そのヘッドコーチとして岩本 能史さんをお呼びし、会社の会議室で話を聞かせてもらったのが、岩本さんとの出会いだった。

岩本能史_プロフィール

 

当時の俺は、TIMEXの時計を売っているくせに、自分から走るつもりはなかった。TIMEX RUNNING CLUB などというものができてしまったため、イベントごとでは少しだけ走らざるを得なくなってしまったが、自分から積極的に走ることはなかった。

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※ 2008年、銀座を女性のみで走ったイベントにて。右の旗を持っているのが岩本さん、左の旗を持っているのが俺。

 

だから、最初は岩本さんのことも知らなかったし、彼が取り組んでいたウルトラマラソンという世界の話を聞いても、ただ「超人だ」としか思えなかった。

ただ、そんなランニングに無知な俺であっても、彼の話は抜群に面白かった。世間の常識を疑い、仮説を立て、それを自ら実験して実証していく姿勢は、研究者然としていた。

普通の「研究者」と違うのは、彼の話ぶりと醸し出す雰囲気だ。たとえ話を多用し、ときにワザと脱線して見せ、最終的には話を見事に主題に集約する。コミカルな雰囲気を出していたかと思えば、突如真剣な表情でこちらをハッとさせる。俺を含むイベント参加者の誰もが、彼の話に魅了された。俺がこれまでに見てきたプレゼンテーションの中で、岩本さんのそれは間違いなくトップ3に入る。

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その彼が、繰り返し強調していた理論がある。彼自身が「薄底シューズ論」と呼ぶものだ。曰く…

 

ランのヒザ痛は着地衝撃ではなく、着地時に生じるヒザ関節のヒネリとネジレが原因

・ゆえ、ソールが厚いほどヒネリとネジレが大きく厚底シューズは痛みの元

・せっかく得られる自重と地面からの反発による推進力を厚いソールが吸収てしまう

・ゆえ、同じ1m進むのに薄底より厚底の方が大きなチカラを要する

 

初心者はクッションの効いた厚底シューズを、上級者はソールが薄くて反発力に優れた薄底シューズを。これは、長い間ランニング業界で常識とされていたものだった。岩本さんはその常識を疑い、「薄底シューズ論」を世に問うたわけだ。

この「薄底シューズ論」は賛否両論、非常に話題になった。当時のことを知っている人も多いと思う。ランニングに無知な俺から見ても、あれは完全に「バズった」状態だった。

岩本さんが「薄底シューズ論」を世に出してから15年。このたび、彼が自論を補足した。彼はこの記事でこう言っている。

 

で、15年経った今、補足します。

厚底でもいいです。

もう一回、

 

『厚底シューズもアリ』

 

です。

あ、でも上でも書いたようにナイキのアレやホカのアレを指しているわけではありません。

この2モデル、足入れたことがないのでわかりません。

 

「補足じゃなくて撤回じゃねーか!」と思う向きもあるかも知れないが、そうではない。詳細は岩本さんのブログ本文を読んでほしい。

そして、俺が岩本さんの記事に補足させてもらうとしたら、こういうことだ。

 

「Onの『厚底』は着地した瞬間に『薄底』になる」

 

15年前の「薄底シューズ論」が述べていたように、当時のいわゆる厚底シューズの問題は、ミッドソールに封入されたクッション材 (空気やジェル等) が潰れきらない構造上、どうしても足首や膝関節にヒネリとネジリが発生してしまうことにあった。そして、クッション材が潰れきらないことが原因で、前方への推進力をそのクッション材が吸収してしまうことであった。

そこにひとつの解決案を提示したのが、Onの世界特許技術「CloudTec®」システムだ。Onは、ミッドソールにクッション材としての空気やジェルなどを封入していない。中空になった独特の3D構造を採用している。

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※ 岩本さんが最近特に気に入っているクラウドX

 

着地の衝撃で中空のCloudTec®は潰れる。そして、潰れた後は一枚の板のようになり、前方への推進力を効率的に地面に伝えられる状態になる。

つまり、着地の寸前には「厚底」だったものが、着地の衝撃を受け切ったあとは「薄底」に変化するわけだ。その意味で、OnのCloudTec®システムは、岩本さんの「薄底シューズ論」と矛盾しない

Onがこの世に誕生したのは、2010年。今からわずか8年前のことだ。岩本さんが「薄底シューズ論」を提唱し始めたのは15年前。その頃、共同創業者のオリヴィエ・ベルンハルドは、足首の痛みに耐えながら世界トップを張っていた。

オリヴィエが「もっと痛みなく楽しく走れるようにはどうしたらいいんだろう」と考え始め、これまでの常識を破る “Be Different” な1足を生み出そうとしていた頃、岩本さんは「非常識」を掲げて自らの身体で実験を重ねていた。

そんな岩本さんとOnの出会いは、スイスと日本のふたつの非常識の出会いだったようにも思える。そして、そのふたつの仲立ちをしたのが俺だったことは、これから先も自慢していこうと思う。

岩本師のブログ記事全文は、こちらから。

 

次回「On クラウド ウォータープルーフ、完全防水のクラウドについて」に続く

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