岩本 能史の好きな1足。

      2018/01/22

Badwater_2

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ランニングを人生で大切なものとして位置付けて生きるOnジャパンのメンバーたち。先日、彼らにとっての「好きな1足」について、青野 敏之鎌田 和明佐野 亮、そして前原 靖子の4名に話を聞いた。

ヤスコの最も好きな1足は、「クラウドレーサー」であった。そのクラウドレーサーは、プロフットレーサー・岩本 能史さんがヤスコに教えたものだった。

今回、ヤスコのランニングの師である岩本さんに、話を聞いた。

岩本能史_プロフィール

 

Q1:
岩本さん、インタビューをさせていただきありがとうございます。早速ですが、岩本さんが好きなOnを教えてください。一番好きなシューズは何となく分かるので(笑)、上位3つほど挙げていただけますか?

A1:
駒田さんのお察しの通り、1位はクラウドレーサーです(笑)
2位はクラウドフラッシュ、3位はクラウドですね。

 

Q2: 
やっぱり1位はクラウドレーサーでしたね!(笑) それでは、まずはクラウドレーサーを好きな理由を教えてください。

A2:
クラウドレーサーはOnとの出会いという意味でも特別なモデルです。

岩本さん_クラウドレーサー_3

ロードランナーはトライアスリートやトレイルランナーと比べると良くも悪くも保守的な傾向があります。特にサプリメントとシューズメーカーは一度「これ!」と決めたら何十年も、という人までいるほど。

ちょっとそれて業界裏話的なコトなのですが、同じメーカー、同じブランドでも実はそのメーカーが設計 → 開発 → 生産をせずまったく別のメーカーに作らせ、ロゴやタグだけを自社製品としてラインナップしているというような例は常識です。

これは日本の大手メーカーしかり、世界中でも当たり前におこなわれています。チップスターはナビスコではなくヤマザキが作っていましたよね。つまりそーゆーことです。

チップスター

例えば、大手A社のbというモデルだけA社が作り、同じA社のcというモデルは全く別のEというメーカーが作ってA社のロゴやタグを付け、A社製として売られています。

一般のランナーの皆さんは本当に驚くでしょうが、その大手A社のcというモデルを作っているE社は、実は大手F社のgというモデルも作っている、というのがシューズ業界というものなのですね。

それなのに、同じA社というだけで、実は全く別の複数のメーカーが作ったシューズを「相性」という「思い込みで」何十年も履き続ける傾向がロードランナーには見られます。

他にもシューズの裏に付いている黒いポツポツした滑り止めの部分ありますよね。あれって大手メーカーのほとんどが同じ素材メーカーの同じパーツを搭載しているのですが、「A社の滑り止めはよくグリップするけれどB社のモノはあまりグリップせず、C社のモノは剥がれ易い」などという声を多々聞いたりします。

同じ素材メーカーの同じ素材ですから、グリップ力は同じだし、接着剤も同じモノを使っているので剥がれに対する強度も同じです。それでも「思い込み」や「思い入れ」でそこまで感覚を鈍らせ、優劣さえも顕著に覆してしてしまうのですね。

話が長くなりましたが、そんなワケで僕の場合、シューズに限らず、あらゆるアイテムやランニングのノウハウまで、世の常識とされているモノやコトにまず「?マーク」を付け、既成概念や固定観念を振り払ったニュートラルな状態で判断するようにしています。

なぜなら、履いて走らなければわからないのがランニングシューズです。僕はあらゆるメーカーのモデルをハサミとナイフで解剖してきたことで、どれだけOnが真摯にシューズ作りに取り組んでいるのか、がわかりました。

例えば、店頭で手にとってみたら軽くて「お〜っ!」というシューズも、解剖したらミッドソールのEVA(スポンジ状の発泡素材)がスカスカで、耐久性と安全性を犠牲にしているモデルがあるのがこのランニングシューズ業界じゃないですか。

 

「あらゆるメーカーのモデルを解剖してきたという話、オリヴィエも同じことを語っていました。だからこそ、『自分が履きたいシューズを作る』という発想になったようです。

 

そして、既成概念や固定観念を振り払う、というのはOnの姿勢そのものです。なんだか感動」

 

今だから話せますが、あの当時のクラウドレーサーを見たランナーの多くは「このシューズ、走れるの?」と思い「ちょっと待てよ」と履くのをためらったはずです。

 

「はい、実際そう言われました。最初の東京マラソンEXPOなんて、そういう声しかなかったと言ってもいいくらいです(笑)」

 

そうでしょう(笑) でも、僕は「まずは履いてみよう」ということでニュートラルな気持ちで履いてみたら「何コレ!?」というもちろんいい方の驚きがありました。

あ、もしかしたら長年のお付き合いのある「駒田さんのオススメだからいいに決まってる!」という固定観念に判断を鈍らせ・・・いやいや、採点が甘くなったかもしれませんね(笑)

レーサーはロード用のモデルですが、平気でアメリカの100マイルトレイルレースでも履きました。

岩本さん_クラウドレーサー

 

「トレイルでクラウドレーサー履いたなんて、日本人では岩本さんくらいじゃないですかね?」

 

いいんです。競泳用水着よりもTバックビキニの方が速く泳げるかもしれないし快適かもしれないじゃないですか(笑) 出来そうならまずはやってみる、ってことが大切です。

そうしたら本当に結果オーライ。それがクラウドレーサーでした。

岩本さん_クラウドレーサー_2

 

Q3:
次に、2位のクラウドフラッシュの好きな理由を教えてください。

A3:
クラウドフラッシュですが、このモデルだけは「履けばわかる!」としか言えません。

足を入れた瞬間のフィット感、走り出した直後から感じる前に押し出されるような加速&スピード感、それと高く乾いたプラスティッキーな接地音。挙げればキリがないのですが、一瞬で惚れました

岩本さん_クラウドフラッシュ

残念ながら、クラウドレーサーを20足近く履きつぶした後ですから、「Onのフラッグシップモデルが悪いはずがない」という固定観念にがんじがらめ状態でしたし(もちろん今も)客観的判断力はすでになかったに等しいことをこの場をお借りしてお詫び申し上げましょう。

 

「さっきの感動を返してくれw」

 

クラウドフラッシュ、上述した通り「履けばわかる!」ということで、駒田さんに無理を言ってショップのない沖縄、金沢、島根、青森にはメンズ、レディースの全サイズを持って試し履き行脚をしたほどです。なぜかって、クラウドフラッシュは「履けばわかる!」のですから。

実際の僕はレースで3足を使っています。スタートから117km地点までは、クラウドフラッシュのUSサイズ7.5 (25.5cm) を、そこから170km地点までは同じくクラウドフラッシュのUSサイズ8 (26.0cm) を、そしてゴールの217km地点まではクラウドで走っています。

岩本さん_クラウドフラッシュ_2

岩本さん_クラウドフラッシュ_3

 

Q4:
今お話に出たクラウドが3位ですね。

A4:
クラウドは、「履いて楽しいシューズ」です。

ということはもちろん「歩いても楽しいシューズ」なのです。昨年の10月は一切走らず、月間400kmを歩きました。

岩本さん_クラウド

歩行練習を採り入れている人は解ると思いますが、歩行って、いくら歩いても本当に距離が出ない。ランだったら数分走れば1kmなのですが、歩行は10分歩いてもまだ1km以下。単調だし、進まないし、距離も出ないし、けっこう修行チックです。

ただ、クラウドは履いて楽しいシューズですから、単調さ95%楽しさ5%の400kmを少なくとも楽しさ70%程度には押し上げてくれたと思っています。クラウドじゃなかったらその1ヶ月は地獄だったはずです。

レース後半の約50kmも本当は楽しくないんです。だって砂漠の中の1本道をすでに20時間近く進んできているのですから。

砂漠の一本道

そんなときに「楽しい」という要素は、レースに前向きに対峙する上では大きな役割を果たすものです。

岩本さん_クラウド_2

僕のレース (BADWATERウルトラマラソン) にはサポートクルーが6人帯同するのですが、全員がクラウドです。それは僕の退屈なレース振りを少しでも楽しくすることが出来るから、かも知れないですね(笑)

BADWATERクルー_クラウド

そしてクラウド、ご覧の通り非常におしゃれ。だからランの耐用期間が過ぎても街履きで通用します。そこは他メーカーのシューズと全く違う点ですね。

岩本さん_街履き用クラウド

これは僕の予断なのですが、多分世界で一番カラーバリエーションが豊富なシューズモデルではないでしょうか。選ぶ楽しさ、履く楽しさ、合わせる楽しさも兼ね備えた希有なモデルだと思います。

 

Q5:
「履けばわかる」「履いて楽しい」というのは、Onがいつも意識しているところです。岩本さんにそう思っていただけて嬉しい。

ところで、岩本さんに初めてOnを紹介したのは、2013年末〜2014年初だったと記憶しています。初めてOnを履いたとき、どう思われましたか?

A5:
その頃、以前履いていたメーカーのモデルが大きなモデルチェンジをしました。

しっかりしたシューズだったんですが、ニューモデルが残念ながら僕には合わなかったんです。これはそのシューズが劣っていたということではなく、僕(の走り)との相性の問題だったのでしょう。それが証拠に、そのモデルは今も多くのランナーのランニングライフの中心にありますし、ベストタイムに導いています。

そんなワケで、さてどうしようとなったときにたまたま駒田さんが新しいブランドを扱うことを知り、だったら一度履くだけ履いてみようかと思ったらこれがドンピシャはまったという訳です。

スクリーンショット 2016-05-18 10.10.24

 

Q6:
岩本さんに履いてもらうようになり、「さあこれから!」という頃、当時の僕の勤め先がOnの取り扱いを止め、Onジャパンを立ち上げることになります。

Onジャパンの立ち上げメンバーのひとり、カスタマーサービスマネージャーを採用しようとしたとき、岩本さんはヤスコを紹介してくれました。ヤスコをOnに導いてくれた、そんな岩本師に質問です。どうして彼女を紹介しようと思ったのですか?

A6:
そりゃ、大切な身内が病に倒れたら名医を紹介するじゃないですか。

当時超零細だったOnジャパンがもしつまずいて日本撤退!なんてことになったら一番困るのは駒田さんでしょうけど、二番目に困るのは履くシューズがなくなる僕ですから(笑)

 

「僕を『大切な身内』だなんて…またもや感動。

で、病に倒れた僕を治す『名医』がヤスコなわけですね」

 

靖子からは色々と前の職場での相談や悩みを聞いていました。

このようなことは靖子以外にもよくありますが、大抵の場合、差し障りないアドバイスをしていい人ぶる偽善者の僕です。

 

「さっきの俺の感動を返して (以下略) 」

 

けどちょっとマジレスすると(笑)、靖子レベルの社員を活かすことができていないということは、つまりその会社は靖子の能力さえも測りきれていないのでは?と。

そりゃ本人は「私はこんなレベルじゃないのになぜこの仕事をわざわざ私がやらなきゃならないわけ?」とは言いませんよね。

けど、このミスマッチは靖子本人、職場、その他例えば相対する社外の人たちなど、その誰にとっても幸せであるはずはない、と思ったわけです。

同時に、ピタリとフィットする転職先があれば本人はもちろん、携わるすべてのヒト&モノがうまく回り始めるのではと。。。

そんな時ですよね、駒田さんの「スタッフ募集」の叫び。

「あ、こりゃ靖子だな」と思ってすぐに駒田さんにお伝えしました。

何しろ靖子は僕のレースのクルーであり、Onユーザーであり、語学堪能であり、お利口さんであり、よせばいいのに美人ですから。

 

「そのおかげで、Onに関わる全てのヒト&モノがうまく回り始めました。その結果はご存知の通りです」

岩本さん_ヤスコ

岩本さん_ヤスコ_2

 

Q7:
最後の質問です。2018年、岩本さんのチャレンジは何ですか?

A7:
恒例となったBadwater135(カリフォルニア州デスバレー217km)で、もう一度30時間以内ゴールに返り咲くことです。

BADWATER_Finisher

出来るかどうかはわかりません。

Badwater_2

でも、出来るに決まっているチャレンジには魅力を感じないタチなのでね、それでいいんです。。。

Badwater_3

Onがエンジン内蔵シューズを開発してくれて僕だけに供給してくれたら可能なんですけどね(笑)

BADWATER_1

 

インタビューを終え、昨年9月に一緒にトークイベントをやったときに岩本さんが言った言葉が蘇ってきた。

 

「やれることを、やれるときに、やれるだけやる」

 

折に触れ、岩本さんが口にする言葉だ。

岩本師トークショー

 

「駒田君、Onやめることになったから」の1ヶ月後、キャスパーが日本にきたとき、俺はキャスパーに岩本さんを紹介したことがある。そのとき、俺が思い出したのは、その言葉だった。

「俺は何がしたいんだ」と自らに問いかけたとき、笑えること、熱くなれること、感動できること、そういうものが好きだと思い出した。そういうものを追いかけるのが楽しかったのだ。

目の前にOnがある。日本から消えるかもしれないが、逆に根付かせることができるかもしれない。そう思ったとき、俺は自分にできることを、まさに今、やれるだけやろうと考えた。

結果、Onジャパンができた。「名医」ヤスコも紹介してもらった。やれることを、やれるときに、やれるだけやろうと決めたら道が拓け始めたわけだ。

だから、ヤスコにとってランニングの師匠である岩本さんは、俺にとって人生の師匠のひとりでもある。そして、岩本さんもまた「名医」であったと思う。

こんなことを直接言ったところで、いつもの飄々とした感じで冗談交じりにかわされるに違いないので、ここに感謝の気持ちを記しておきたいと思う。

 

岩本師、ありがとう。

岩本師とビール

 

次回「Onカー完成。#MeetOnFriends ツアー開始」に続く

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