アイアンマン・ケアンズ挑戦記 2017 – 第16話「ランナーズハイ」

      2017/07/07

IM Cairns_close to the finish line_2

第15話「老紳士との再会、T2簡易トイレの攻防」に戻る

 

6月11日(日) 18時。レーススタートから約10時間。

長い長いバイクを終え、ようやくランコースに入ろうとしている。ランコースも去年と同じ。1周14km、エスプラネードの市街地を3周回するコースだ。全くアップダウンはない。実に走りやすいコースだ。

IM Cairns run course

 

それなのに、昨年の俺は6時間26分もかかってしまった。全身に痺れが出てしまい、20分間救急車で横になっていたからだ。今年はどうなるのだろうか。T1で21分空白を作り、その上ランでまた20分ロスしたら…。ランスタートゲートを潜り、おそるおそる走り始める。

IM Cairns run start

 

(あれ…?なんか軽い……?)

 

しかし不思議なことに、一歩目から去年と違った。着地の衝撃をほとんど感じない。身体が軽い。飛ぶように前に進む。前を走る選手達を次から次へと抜く。抜かれることはあっても抜くことはなかった俺が。クラウドフライヤーのおかげなのだろうか。

信じられない気持ちのまま、2km地点のエイドに到着する。去年倒れた場所だ。そして、プレッツェルを何度となく勧められ、固辞し続けた場所だ。

 

「水いる?コーラいる?」

 

「コーラください!あと、プレッツェルも!」

 

すると、ボランティア同士で顔を見合わせた後、「プレッツェルないんだ…」と信じられない一言。なんということだ。今回の課題の一つ、2km地点でのプレッツェルチャレンジが。

しかし、ないものは仕方がない。大事なのは、「プレッツェルをオーダーできた今の状態」だ。去年は、たとえ冗談でもプレッツェルをくれとは言えなかった。今は違う。もし出てきたらバリバリいける。

 

「わかった、ありがとう。コーラください!」

「オーケー、コーラ!!」

 

もらったコーラを一気飲みする。冷えていて、炭酸も抜けていない。うまい。こんなにうまいものがこの世にあるだろうか。思わず叫ぶ。

 

「この世で!こいつが!一番うまいエナジードリンクだ!!」

 

ボランティアの人たちと顔を見合わせて大笑いする。バイクのときのショボくれた状態が嘘のようだ。明らかにハイになっている。ボランティアとハイタッチして、そのまま進む。脚が軽い。周りの選手をガンガン抜く。

気がつけばもう市街地に戻ってきた。大通り沿いを走っていると、応援の人たちが声をかけてくれる。突き出される手をバババンと連続でハイタッチしながら進む。

勢いが出すぎ、2人ほどハイタッチを逃してしまったことに気がつき、急ブレーキをかける。少し戻ってその2人ともハイタッチ。

 

「応援してるぞ、ブルートレイン!!」

 

背中越しに聞こえる声援に、拳を突き上げて応える。歓声が聞こえる。

去年、ランコースに落ちた子供用の風船を取ってくれと若い母親から呼びかけられたことを思い出す。あのとき、俺は猛烈に苛立ち、刺すような視線で彼女を見てしまった。今は違う。

そう、もう違う。スタート前、どこを探しても見つからなかった高揚感が戻ってきた。「去年と違う」ということをマイナスに捉えていたが、もうそうは思わない。去年と違う面もあったが、今は間違いなく楽しんでいる。

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前方にまどかが見えてきた。去年と同じように、心配そうな表情で「大丈夫?」と聞かれる。

 

「もう大丈夫!驚くくらい走れるよ!!」

 

すると、さらに元気づけられるニュースをもらった。しげちゃんが、セントレアで完走したのだ。

横浜トライアスロンのスイムでDNFした彼は、それから特訓を重ねてハーフアイアンマンになった。「ヒロキはケアンズで、おれはセントレアでそれぞれ完走しよう!」と言ってくれたことを思い出す。胸のあたりがグッと熱くなる。

Shige Half Ironman

 

まどかと別れ、しげちゃんの完走を喜びながら走る。着地の衝撃を推進力に変え、不安を高揚感に変え、前に進む。やはり辞めなくてよかった。

徐々に脚と身体が重たくなってくる。それでも楽しい。この記憶もきっと一生残る。

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第17話「Again, I am an IRONMAN」に続く

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