アイアンマン・ケアンズ挑戦記 2017 – 第12話「最速不動産王、無言の激励」

      2017/06/30

IM Cairns 2017_最速不動産王

第11話「簡易トイレの大暴れ、T1空白の21分間」に戻る

 

スイムコースは大幅な変更があったが、バイクコースは去年と変わらない。

パームコーブから約40km北上してポートダグラスの街中で折り返し、パームコーブ近くまで南下する。パームコーブ手前でUターンし、再びポートダグラスへ。そこで二度目の折り返しをしてからは、海岸線沿いをひたすらケアンズまで80kmほど南下する180kmのコースだ。

Ironman Cairns 2017_Bike course

 

うねりの強いスイムと大暴れのT1でかなり疲れてしまった。宮古島のときよりも意識して抑えて走り始める。走り始めにスポーツようかんと濡れせんべいを食べる。うまい。美味しく感じられるのはいい兆候だ。俺の場合、ジェル系よりこういう和風な何かの方が向くのかもしれない。

ポートダグラスまで平均27-8kmで進む。昨年の初挑戦時に「ケアンズはどフラット」と言われていた。パームコーブからケアンズに向かう最後のパートは確かにどフラットだが、パームコーブとポートダグラスの往復はさほどフラットではない。少なくとも、俺にとっては。

昨年は追い風に押されて快適にポートダグラスまで進めたが、今年は特にそういうこともない。ケアンズに発つ当日の朝、遠藤さんと一緒に走ったとき、「速度に一喜一憂せず、同じパワーを加えること」とアドバイスをもらっていた。パワーメーターこそないものの、同じ力を加え続けることを意識してみる。追い風であろうと向かい風であろうと、上り坂でも下り坂でも、なるべく同じ力。

 

(む、むずかしい……)

 

そりゃそうだ。簡単にできたらみんな苦労しない。それでも、なるべく速度に一喜一憂しないように淡々と漕ぐ。ケアンズから無事に戻れたらパワーメーター買ってみようかな、などと思いつつ走る。

IM Cairns 2017 bike_1

 

ところが、淡々と漕ぐことのできない事態が発生した。ポートダグラスの手前で腰が痛くなり始める。まだ30kmくらいしか走っていないのに、腰痛が出るのが早すぎる。スイス出張直後にスベった腰は、やはり治っていなかった。

15分に1回くらいの頻度でダンシングらしきものを入れていく。しかし、腰を大きく伸ばし、腰をくねくね左右に揺すっているだけで推進力になっていない。それどころか、これをやるたびに大きくペースを落とす。これをダンシングと呼ぶのは無理がありそうだが、これをやらないと腰が痛すぎて漕ぐどころではない。

1回目のポートダグラスを折り返す。ここまでで40km。残り140km。信じられない。まだ2割程度しか走っていない。

 

(距離表示、見るのやめよう…)

 

速度に一喜一憂しないこと、距離表示を気にしすぎないこと。この2つを意識する。「距離表示を気にしない」と意識していること自体、「残りあと何キロだろう」と気にしているわけなのだが。

それにしても、地味なアップダウンが腰に響く。謎のくねくねダンシングは、5分に1回くらいの頻度に増えている。脚も心肺も平気なはずなのに、腰が痛くてどうしようもない。まだ3分の1くらいしか走っていないのに、残りはどうなってしまうのだろう。うなだれながら進む。

IM Cairns 2017 bike_2

 

突然、背中に軽い衝撃を受けた。ポンと叩かれたようだ。うつむいていた視線を上に戻す。

 

真っ黒のTREK、青白のシマシマ。

水平に伸ばされた左腕。

上を向いた親指。

 

我ながら情けなくなるほど弱々しい声で、最速不動産王の名前を呼ぶ。すると、上を向いた彼の親指にグッと力が入ったように見えた。

そのまま無言で一気にスピードを上げる遠藤さん。その後ろを大柄の選手たちがガンガン追い上げていく。真剣勝負をしている中、わざわざ激励してくれたのだ。

IM Cairns 2017_最速不動産王

 

遠藤さんの背中をなるべく視界におさめておけるよう、スピードを上げる。32km/h、33km/h、それでも彼の背中は見る見る遠ざかっていく。シマシマウェアが見えていたのは、1-2kmくらいの間だったかも知れない。

遠藤さんの姿が完全に見えなくなってからも、ペースは少しだけ上がっていた。

最速不動産王はケアンズへ。俺は2回目のポートダグラスへ。

 

第13話「痛みは一瞬、記憶は一生」に続く

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