アイアンマン・ケアンズ挑戦記 2017 – 第11話「簡易トイレの大暴れ、T1空白の21分間」

   

バイクスタート

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レース後、いくつかこんな言葉を聞いた。

 

「駒田さん、T1で一体何してたんですか?」

 

何をしていたと聞かれても、ウェットスーツを脱いで、バイクの装備に着替え、バイクをピックアップしていたに決まっている。いつもと同じだ。しかし、その質問をした人たちの表情は、皆一様に「信じられん」といったものだった。なんでそんな表情をするのだろう。

 

「T1、21分もかかってましたよ…?」

 

う、嘘でしょ?

 

俺は記憶を辿った……。

CEEPO_T1

 

6月11日(日) 8:45頃

プラスティック製の椅子がズラリと並ぶT1テント内は混雑していた。そして、皆ぐったりとして見える。俺も椅子に座る。負けず劣らずぐったりして見えるはずだ。

 

「ユー!ウェットスーツ、脱ぐの手伝ってやるよ!」

 

すかさず、ハイテンションなボランティアのおじさんが現れた。去年は自分で脱いだのだが、今回はお言葉に甘えることにする。

 

「よっしゃ!いくぞ!イェェェーイ!!」

 

ハイテンションおじさんが勢い良くウェットを引っ張る。その勢いに負けないよう、椅子の背もたれをガッチリ掴む。

Z3R0Dのウェットスーツはスポーンと脚から抜けていく。左足首に巻かれていたアンクルバンドも一緒にスポーンと飛んでいった。ジタバタと慌てて拾おうとするが、身体があまりうまく動かない。かなり疲労しているようだ。

ウェットを脱がせてもらった後、ブルトレのスピードスーツの上半身部分を着る。ピッタリしたウェアなので、着るのにもかなりの労力を要する。着終わった時点でハアハア息が切れる。なんでこんなので疲れてるんだ。

 

「オーウ!ノーウ!!ストーップ!!」

 

隣の椅子では、先ほどのハイテンションおじさんが別の選手のウェットを脱がそうと大暴れしている。彼も先ほどの俺と同じように、椅子の背もたれを必死に掴んでいるが、今にもずり落ちてしまいそうだ。俺よりも弱っているらしい。ハイテンションおじさんがウェットを引っ張るのをやめると、その選手もまたハアハアしている。

いかん。頭がボーッとする。バイクギアバッグに入っている物をひとつひとつ取り出し、慌てずに順番に装備していく。補給食を摂り、T1内に置いてあった水で流し込む。大きく溜息をつき、そのままフラつきながらT1テントを出る。

テントの外には簡易トイレが並んでいる。そういえば、スイムフィニッシュ直後からおしっこを我慢していたのだった。トイレのひとつに入る。

 

(あれ…?このスーツ、おしっこしにくいかも…)

 

宮古島で着ていたZ3R0Dスーツは、フロントジッパーを全部下げれば問題なく用を足すことができた。しかし、このブルトレスピードスーツは、ジッパーを全部下げてもあまりうまくいきそうにない。

かといって、いまさら上半身部分を脱いで用を足すことは避けたい。おそらく、自分ひとりでは脱ぐのも一苦労なはずだ。下手をすれば、上半身のどこかを攣ってしまう。結局、ジッパーを下げて用を足す方法しか採れない。

加えて、先ほどのスイムで俺のアイツは縮み上がっている。引きずり出すのに一苦労だ。そこで、第一段階として、アイツを温めるところから開始する。

スピードスーツの股間から両手を突っ込み、じんわ〜と温める。少しほぐれたところで、満を持して引きずりだし、放出を試みる。

しかし、このスピードスーツは実にタイト。引きずり出したはいいが、尿道が圧迫されてしまい、うまく放出ができない。スーツで圧迫されにくい位置を探ると、腰を90度近くまで曲げたポジションがベストという答えが出た。

仮設トイレの中で、90度のお辞儀ポジションでジタバタするハマのダンディズム39歳。ここT1テント周辺は、見渡す限りジタバタであふれている。

バイクをピックアップし、スタート位置まで走る。かなちゃんゆきこさん、そしてまどかの声援を背中に受けてバイクに乗り、180kmの旅へ。

すまんな、さっきまでトイレで暴れてたのよ、おれ。

バイクスタート

 

第12話「最速不動産王、無言の激励」に続く

※ 去年のケアンズではランコース途中の救急車で20分寝ていました。それよりも長い時間、T1で費やしてしまいました。台無しです。下の応援バナーのクリックをお願いします。
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