アイアンマン・ケアンズ挑戦記 2016 – 第2話「何かの縁」

      2016/08/10

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第1話「アイアンマンコール」に戻る

トライアスロンの素晴らしさ、アイアンマンの凄さにすっかり魅せられて日本に帰ってきた俺だったが、かといって自分でアレをやろうとは思えなかった。あまりに別世界のことに感じられたからだ。

ハワイから戻ってきた後ほどなくして、俺はTIMEXのマーケティング担当者になった。TIMEXブランドを語るにあたって、トライアスロンとアイアンマンのことを喋れるようにはなった。しかし、自分でやることはなく、そのまま数年が過ぎていった。

そして2012年12月

「駒田君、ちょっといいかな」

上司に呼び出されたのは、年も押し迫ったある日のことだった。呼び出されたのは俺だけでなく、当時のTIMEXチームリーダーも一緒。何か問題でも起こしてしまったのかな、それとも何かややこしいことでも命じられるのかな、と思った。予感は当たった。上司の用件は後者であった。

「今度、スイスのランニングシューズの輸入をはじめることになった」

「そうなんですね〜」

嫌な予感がする。とりあえず、間合いを取りつつ様子を見る。

「駒田君、スポーツ好きだよね」

「ええまあ…」

確かに嫌いではない。スポーツ観戦はあまりしないが、やるのは好きだ。ただ、俺のやっているのは空手だけど。

「ランニングにも興味あるよね?」

「いいえありません (棒 」

急角度で迫る危機。必死の抵抗を試みる。しかし抵抗も虚しく、30分後、半ば呆然としてデスクに戻った。

その謎のランニングシューズブランドの仕事を受けるか、社命が気に食わないなら会社を去るか、そういう二択を迫られたのだ。10年近く勤めた会社から、そんな二択を突きつけられるとは思わなかった。

TIMEXチームの一員として、仲間たちとブランドを強くしていこうと頑張っていたところだった。そして、その成果が目に見える形で現れつつあったところで、こんな話だ。大体、「On」ってなんなんだ。

猛烈にイラつきながら、俺はそのブランドのウェブサイトを開いた。目に飛び込んできたのは、鮮やかなカラーリングのシューズ。

Cloudracer13

「あれ…?これカッコいいぞ…?」

ついさっきまでのイラつきがフッと消え、俺はブランドストーリーのページを開いた。読み進めていくうちに、このブランドの革新性に大きな興味を持った。これはいけるかも知れない。これを日本に紹介できるのはチャンスかも知れない。夢中になってブランドを調べる。そして、分かったことがひとつ。

「あれ…?このオリヴィエって人…アイアンマンチャンピオンなんだ…」

On共同創業者オリヴィエ・ベルンハルド。アイアンマン・ヨーロッパチャンピオンを6度。デュアスロン・ワールドチャンピオンを3度。コナでもトップ10に入っている。とんでもない人だ。

ふと、4年前のハワイの旅の記憶が蘇った。見知らぬ人たちを全力で応援したあの1日。奥さん、娘さんと抱き合い、お孫さんを肩車するボロボロの年配のトライアスリートの姿。そして、”You are an IRONMAN!!” の叫び声。

あの世界にいた人が作ったブランドなのか。これも何かの縁なんだろうか。アイアンマン…。

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第3話「鉄人、届かず」に続く

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