ハセツネ30K → 17K 疾走篇 – 第10話「怒涛のコースミス、恒例のゴールスプリント」

   

ゴールスプリント_2

第9話「百式入山、天才フィニッシュ」に戻る

 

スタートから1時間半。現在、入山峠。

ここは、本来であれば25km地点だった場所。昨年のハセツネ30Kでは、ここで残り5kmだと思い込み、スタッフから「あと7kmです」と言われてへたり込んだ場所だ。「ならハセツネ32Kって言ってくれよ」と心の中で愚痴った記憶が鮮やかによみがえる。

つまり、ここまでくれば間違いなく残り7km。トップ選手たちは、遡ること20分ほど前から続々とフィニッシュしているはずだ。しかし、俺はまさにこれから山に入る。

トレイルに入っても、渋滞は全く解消されない。去年と同じだ。集団の流れに乗ってじわじわ進む。山に入って一段と寒く感じる。ウェザージャケットとクライマシャツのセットアップはいい選択だった。

少しずつコースを進んでいくと、あるときから集団が動き始めた。俺の前をゆっくり歩いていた人が、急に消える。坂を登り切ると、前の人が下り坂を駆け下りているのが見える。俺も後に続く。

それまでの渋滞の鬱憤を晴らすかのようなスピードで動く集団。抜くも抜かれるもままならないシングルトラックが続く。前の人に離されないよう、後ろの人の邪魔にならないよう、集団と同じペースで走る。

渋滞が解消されてからは、自分としては悪くないペースで走っていた。前日までの雨の影響でぬかるんでいたが、クラウドベンチャー ピークは申し分なく地面を捉えてくれる。去年は、スリップしてコースから滑り落ちてしまうのが怖くて仕方なかったのに、今年はその心配が全くない。

自分の実力以上のペースで進んでいるため疲れてきたが、「トレランって楽しいなぁ」と思いながら進んでいると、向こうに俺を見て叫んでいる集団がいる。

 

トシさん!大瀬さん!?小林さんも??」

 

「ひろきさーん!!」

「こまださーん!!」

 

思わず立ち止まり、サングラスを外す。SALOMONの大瀬さん小林さんまで。彼らならとっくにゴールしてるのは分かるが、なんでこんなところまで。

 

「なんでってそりゃ応援ですよw あと1kmちょいですよ。ファイトです!」

「ほんの5分くらい前にヤスコさんが通ったばかりですよ!」

 

なんと嬉しいことを言ってくれるのだ。俺なら、コース逆走してまで応援なんて絶対できんというのに。「ほへ〜。。。」とか妙な声を出しながら、バイザーを脱いで顔を拭う。汗だくの中に涙がまじっていないか心配だ。

ほへー
※ 「ほへ〜。。。」の瞬間をトシに撮られていたの図。

 

バイザーをかぶり直し、サングラスをかけ直した俺は怒涛のように走り出した。後ろから、一流ランナーたちの軽やかな足音が聞こえる。なんだか笑い声も混じっている気がする。俺にとって「怒涛の勢い」は、彼らにとって「ジョグ」に違いない。

俺は重力に任せ、転がり落ちるように坂を下る。坂を下りきると、見通しのよい道が広がっている。坂を駆け下りた勢いに任せて、そのまま真っ直ぐ進む。

すっかり疲れも吹き飛んだ。いい感じだ。このまま一気に……あれ?

 

 

背後に気配がない。

 

トシ?

 

大瀬さん??

 

小林さん??

 

 

つーか、俺はどこ???

 

 

振り返ると、はるか彼方に人影が見える。手をブンブン振って、何やら叫んでいる。

 

 

「え?」

 

 

「ちがいますよ〜…ミス……こっちです〜……」

 

 

まさかのコースミス。しかもかなりダイナミックにやらかしたらしい。ずっと向こうで、3人分の小さな人影が腹をよじって笑っているのが見える。

コースミス_1
※ 腹をよじって笑いながら、コースミスした奴を撮った写真。

 

なんで止めてくれなかったんだ、と理不尽な思いを胸に秘め、冷静さを取り戻すべく給水しながら戻る。しかし遠い。つらい。

コースミス_2

 

近づけば近づくほど、奴らのゲラゲラ笑いが大きく聞こえる。おのれ。

コースミス_3

 

 

「なんかカッコいいっすよw 男らしさが出てましたよww」

 

「しぬ。。。なんで止めてくれなかったんだ。。。」

 

「叫んだけど声が届かなかったっすww」

 

 

そうかい、それなら仕方ないよな。しかしキツい。

 

気を取り直し、正しいコースを走る。このくだりの間に、何十人と抜かれたようだ。後ろの方からSALOMONチームの「さすがですね、魅せてくれますねOnはw」と半バカにした賞賛が聞こえてくる。楽しんでくれたのなら何より。

 

笑い声に後押しされるように走っていると、いつの間にか市街地に入っていた。

 

「あと残り400mです!上げていって!!」

 

真横を走るトシのハッパを受け、反射的にトシにバキューン。ペースを上げる。トシは引き続き笑いながらついてきてくれる。

トシにバキューン

 

しんどいながら頑張っていると、リバーティオの看板が見えてきた。この看板は、俺にとってはもう癒しの象徴だ。

 

「残り200m!!」

 

トシの声が聞こえた瞬間、俺の中で恒例となりつつあるゴールスプリント開始。確か、ケアンズのゴール間近で遠藤さんの姿を見た瞬間もこんな感じになった。頭が「プツン」としてしまうとこうなる。

Ironman Cairns Finish_2
※ アイアンマン・ケアンズ2016のゴールスプリント開始時。

 

「もっと上げて上げて!!」というトシの笑い声が隣から聞こえる。乗せられるようにどんどんペースを上げながら、「次のケアンズは、絶対にコレやらねぇ」と場違いなことを考える。

最後の直線の向こうにカズがiPhoneを構えているのが見える。カズに向かって突進するように走り、彼の真ん前をほぼ直角に曲がってフィニッシュラインに向かう。

ゴールスプリント_1

 

頭がプツンとした状態でそのままフィニッシュ。

ゴールスプリント_2

 

「ひろきさん、お疲れさまでしたー!!」

 

トシ、ありがとう。コースミスって疲れた。でも楽しかったな。

 

最終話「大団円と見せかけて」に続く

※ 楽しいレースはこれにて終了。次でようやくこのお話も終了です。応援バナーのクリックをお願いします。
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