ハセツネ観戦記 2017 – 第5話「俺たち浮かれた応援隊」

      2017/10/17

浅間峠へ_2

第4話「秋元さん、DNF宣言の怪」に戻る

 

「今年はバッチリですね!」

「そうだな!」

 

ランニングパンツとクライマシャツで固めたカズが、ランニングパンツとコンフォートTを装備した俺に、にこやかに語りかける。準備万端のなせる余裕というやつだ。

去年と同様、20km地点の第一関門「浅間峠」にたどり着くまでに、俺のコンフォートTはビッチャビチャになるだろう。それを見越して、着替えのクライマシャツ、そして念には念を入れてウェザージャケットをバッグの中に忍ばせておいた。それに加え、クラウドベンチャー ウォータプルーフで足元の防水・防寒対策もバッチリ。完璧だ。全く隙がない。百式出撃はない。

 

「あっ、あれ!なんでしたっけ?」

 

ヤスコが黄色い物体を指差す。いい質問だ。あれこそ、ハセツネ名物「PAIL TOILET (バケツトイレ)」。別名、山男たちの気迫

そう説明しながら、トシをPAIL TOILETの前にいざなう。「え?なんですかなんですか?」と困惑した様子のトシ。案ずるな、中に放り込んだりはしない。ただの記念撮影だ。縁起物だからな。

トシとPAIL TOILET

 

名物との記念撮影を終え、14時20分、俺たちは山に入った。かなり急で細い一本道だ。第一関門の浅間峠に行くには、この道を行かねばならない。

浅間峠へ_1

 

途中、浮かれた様子の若手たちの写真などを撮りつつ、俺たちは先に進む。

浅間峠へ_2

 

目的地までは約2.2km。大したことないようでいて、これがなかなかしんどい。大汗をかき、思った通りコンフォートTをビッチャビチャにしつつ、14時55分、俺たちは浅間峠にたどり着いた。

すかさずTシャツを脱ぎ、クライマシャツに着替え、上からウェザージャケットを着込む。ヤスコが「百式いりませんか?」と言いながら、バックパックから何かキラリと光るものを取り出そうとしていたが、気のせいだろう。

周りの様子を見ると、まだトップ選手は通過していない。大会スタッフが、上田瑠偉、上田瑠偉がもうすぐです!」と興奮した様子で話している。大瀬の秘奥義「バナナの皮ですってんころりん」は炸裂しなかったようだ。

15時16分、第一関門浅間峠に瑠偉くんが現れた。まるで飛んでいるような走りだ。地面にほんの一瞬しか接地していない。

上田瑠偉選手_1

 

大会スタッフや応援の人たちが集まっている場所を一瞬で過ぎ去り、急な坂をまるで平地のようにすっ飛んでいく。超一流のトレラン選手の走りを間近で見たのはこれが初めて。重力とかないんか。

上田瑠偉選手_2

 

瑠偉くんがすっ飛んで消えてから20分。俺たちの大瀬は現れない。

 

「あれ?大瀬さん来ないですね。。」

「ほんとだな」

 

これはあれか。自分のバナナの皮に滑ってやられたパターンか。

 

「あっ!大瀬!!

…あっ、違った」

 

ヤスコ、違ったとか言ったら他の選手に悪いですよ。まあ、気持ちはわかるけど。

 

「わかるでしょ、ヤスコさん。去年の僕の気持ちが」

「す、すみません。。。」

 

去年、カズはここでヤスコを見つけるまで2時間以上、「あっ。。ちがった。。。」と壊れたDVDプレイヤーのように同じことばかり言っていたのだ。あれはハタ目に見ても危険な状態だった。

15時42分、女子1位選手が通過していく。

 

「で、大瀬は?」

「ロストしたかな…」

「ロストって俺じゃあるまいし。。。」

 

まあ、大丈夫だろう。それに、これはレユニオンに参戦する彼にとっては練習の位置付けだったはずだ。

 

「練習にしても遅くないすか?」

 

SALOMONサポート選手、小林さんの容赦ないツッコミが山に響く。っていうか、あなたいつの間にDNFしてたの。左膝痛めちゃってたの。そうか、なら一緒に応援しよう。

 

「あっ!来た!大瀬さん!!」

 

15時49分、カズが叫んだ。赤白のTシャツ、確かに大瀬。しかし、一瞬、彼は歩こうとしたように見えた。もしかして、やめようとしたのだろうか。

 

「大瀬ー!大瀬ーー!!」

 

力の限り叫ぶ。すると、彼はまた走り始めた。畳み掛けるように、Onジャパン全員で応援という名の罵声を浴びせる。

 

 

「かずふみー!つっこめオラァーー!!!」

 

 

そして大瀬は軽やかに消えていった。うーむ、やめるにやめられなくなっちゃったのかな。かずふみー。がんばれー。

 

 

「ところでひろきさん」

 

ん?なんだねヤスコさん。

 

秋元さんはいつ頃来ますかね?」

 

 

「あと5時間は来ません」

 

 

何故なら、この俺と彼のアスリートレベルはほぼ一緒。その俺が言うのだ、間違いない。

 

「じゃ、じゃあ戻りましょうか。。寒くなってきましたしね。。。」

 

そうだな。下山しよう。秋元さん、がんばれー。

 

第6話「太陽拳の光と影」に続く

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