ハセツネ挑戦記 2016 – 第9話「2年ぶりのフィニッシュライン」

      2016/12/26

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第8話「大丈夫です、イケます」に戻る

 

12時20分、22km地点。俺は呆然としていた。

目の前にそびえ立つ巨大な絶壁。カラフルな豆粒のように見える選手たちが、壁にへばりつくようにして登っていくのが見える。頂上は見えない。しばし立ち尽くす。

ここで、コースマップを再び思い出す。15km地点が最高地点だったが、22km地点から25km地点にかけて、もうひとつ急な登りがあった。それがこれか。

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先ほどヘロヘロになりながらようやくたどり着いた最高地点には、約700mを15kmかけて登ったことになる。勾配にしたら5%弱。大した数字には見えない。それでも十分大変だった。

一方、目の前にそびえる絶壁は、約300mを3kmかけて登ることになるようだ。勾配にするとちょうど10%。最高地点への道程の倍以上ということだ。ややげんなりする。

周りを見ると、同じくげんなり、もしくは意気消沈といった雰囲気の人が何人かいる。その中の1人に、「すごいですねコレ」と声をかけてみる。すると、そこにいる人たちは苦笑いしながら「これはキツそう」「またこんな登りが…」と口にする。

「これがきっと最後の登りのはずですよね?」と、GPSウォッチを着けている人に聞いてみる。その人は以前もハセツネ30Kに出たことがあるらしく、自信を持って頷いてくれた。

「よし、じゃあ行きますか!」と自分自身に声をかけ、登り始める。その人たちもついてくるのが気配で分かる。

それにしても、とんでもない急坂だ。足でも滑らせたら、後ろの人を巻き込んで盛大な事故になってしまう。あるいは、崖側に落ちたりしたら確実に死んでしまう

汗をボタボタ落としながら、ハアハア言いながら、ふと10月のハセツネ本戦のことを考える。ハセツネ本戦は、夜の山を進まなければならないらしい。これまでの山岳コースに、街灯などひとつもなかった。選手たちはヘッドライトとハンドライトで道を照らしながら進むという。

こんな、一歩踏み外したら生死に関わりそうな道を、真っ暗な中、懐中電灯に毛の生えたようなものだけで歩く?考えるだけで恐ろしい。ハセツネ本戦に出るためには、準備しすぎということはないのだろう。

脚が少しフラついた。こぶし大の石を踏んでしまったようだ。体勢は整えたが、石が下に落ちていく。ギョッとして後ろを振り向く。幸い、石は後ろの人たちを外れて転がっていった。胸をなで下ろす。

そうか、こういうこともある。何も見えない夜道で、いきなり何かが落ちてくるかも知れない。疲れ切って足元だけしか見てなかったら、危ないことになるかも知れない。考えれば考えるほど、山は大変なものだと思う。

足を踏み外さないように、後ろにモノを落とさないように、細かく一歩一歩進む。キツい坂だったが、いつの間にか登り切っていた。

「もう大きな登りは終わりです!ここからはもう下りですよ、天国です!」と、さっきの人が笑顔で話しかけてくれた。「はい、頑張りましょう!」と返し、坂を下り始める。

もう脚はほぼ売り切れている感じだ。下りで何度もカクカクし、たまにもつれて転びそうになる。登りはキツかったが、下りも下りでなかなか厳しい。あまり天国にいるような感じはしない。

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13時半、25km地点の標識を見つけてほどなく、もはやお馴染みの黄色いテントを発見。PAIL TOILETを見て安心するとは、人間変われば変わるものだ。ようやく、あと5km……。

 

「あと7kmです!もう少しですよ〜!」

 

スタッフの声が聞こえる。耳を疑う。

 

「あの…あと5kmくらいじゃ…?」

「いえ、あと7kmくらいです。確実に5km以上はありますよ」

 

思わず座り込んでしまう。「ハセツネ32Kって言ってくれよ」と心の中で愚痴る。脚がガチガチだ。マッサージとストレッチをするが、痛みで呻いてしまう。最後の補給食を口にして、ポカリを飲む。スタートしてから5時間。下り基調とはいえ、あと7km。

ふと、20km地点の神社で出会った男性のことを思い出す。そうだった、俺は「大丈夫です、イケます」と言ったのだった。嘘はいかん。とりあえずもう一歩。

「たかが30km」と甘く見ていたレース前の俺をひっぱたいてやりたい。補給食をもっと持ってくればよかった。ヤスコはもうゴールしたかな。いま何キロだろう。GPSウォッチ、いい加減欲しい。コーラ飲みてぇ。

とりとめもなく色々考えていたら、気がつくと山が終わっていた。スタッフが「あと2km!」と声を上げている。あと2km。あとは全部ロード。脚は終わっていたが、ロードだと前に進みやすい。アスファルトの道は、こんなにありがたいものだったか。

 

14時50分、リバーティオの看板が見えた。フィニッシュラインも見えてきた。

自分の中で「チャレンジ」と位置付けたもので、フィニッシュラインを見たのは久しぶりだ。去年は宮古島でも洞爺湖でも、それを実現できなかった。

ハセツネ30Kのフィニッシュラインをくぐり、ガッツポーズがグッと自然に出た。32km、6時間20分。ある意味、これは2014年の宮古島以来、2年ぶりのフィニッシュライン。遅いが、それでもやり切った。

 

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第10話「ヤスコ、長谷川恒男CUPスタート」に続く

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