ハセツネ挑戦記 2016 – 第5話「トレイルの洗礼、山男たちの気迫」

   

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第4話「ビジネスイン拝島のもてなし」に戻る

 

2016年4月3日(日)、ハセツネ30Kレース当日。気温6度、霧雨。

灰色の空を眺めつつ、5時40分、世話になった猫屋敷ことビジネスイン拝島を後にする。昨晩遭遇した黒猫が「にゃあ」と言いながら見送ってくれた。

6時、JR拝島駅から武蔵五日市駅行きの電車に乗る。電車に乗ってもやたら寒い。ワクワク感を全くかき立ててくれない雰囲気が漂う。少しでも気持ちを盛り上げるべく、二人で半ば無理やりシューズを撮ってみる。ヤスコもクラウドサーファーで出るようだ。

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会場となる秋川渓谷リバーティオまで、武蔵五日市駅から徒歩で約30分。俺はトランクをゴロゴロ引き、ヤスコはデカいトートバッグをえっちらおっちら運ぶ。

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会場までの道程でなかなかの疲労を覚えた俺たちは、受付で無事に装備品のチェックを終え、エントリーを完了した。

レーススタートは8時半。あと1時間ある。寒いからか、おしっこがしたくて仕方ない。レース前にトイレに行っておきたいところだが、「普通のトイレはここにはない」と係員から言われる。

「普通のトイレ」がないというのは、どういうことだろう。普通でないものはあるのだろうか。そう思いながら外を見回していると、何やら小型の黄色いテントがズラリと並んでいるエリアがある。

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“PAIL TOILET”

 

そう書いてあるのが遠目にも見える。Pail…すなわち手桶。あるいはバケツ。嫌な予感がするが、おしっこをしないわけにはいかない。

俺の順番が来た。テントの中に入る。うむ、確かに手桶的・バケツ的なものが地面に置いてある。

 

おそるおそる開ける。

 

黒いゴミ袋が中に入っている。

 

その中に山のように盛られた邪悪な何か。

 

 

「ぶはぁ!!」

 

 

ガツンと突き抜ける臭気。あるいは山男たちの気迫。

 

ビジネスイン拝島のヤスコ部屋の下水臭を1,000倍強力にしたような威力。リアルに目に染みる。目が、わしの目が。小型バケツのどこに、このような破壊力が秘められているのか。息をなるべく止めるが、思わずえずく。

 

しぬ。しんでしまう。

 

転がり出るようにPAIL TOILETを脱出する都会育ちのダンディズム。山岳耐久レースの洗礼を早くもモロに受けてしまった。これはいい経験をさせてもらった。でもまだ胸のあたりがムカムカする。

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黄色いテント村の中で人知れず深く刻まれた呼吸器系のダメージを引きずりつつ、俺はヤスコに事態を報告した。PAIL TOILETは兵器だと。黄色いテントに入る前に息を止めなければ命の保証はできないと。

ヤスコもスタート前に一度トイレに行っておきたいそうだが、俺のリアルかつダイナミックな報告を聞いてすっかり怯えている。そんなときは魔法の言葉。でも、少しだけアレンジしてみよう。無事では済まないことを知っているから。

 

「大丈夫だ、しんでこい」

 

しかし、案に相違してヤスコは意外なほど平気な様子で戻ってきた。おかしい。アレを喰らって命があるとは。

 

「どうして無事なんだ…?」

「女子選手は200人くらいしかいないですし、それでなんじゃ」

 

「そうか、俺は数の暴力を受けたわけだな…」

 

「なんのこっちゃw ほら、いきますよ!」

 

軽快に歩くヤスコ。未だダメージを引きずる俺。

それでもレースは30分後に始まろうとしている。

 

第6話「ハセツネ30Kスタート」に続く

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