ハセツネ挑戦記 2016 – 第4話「ビジネスイン拝島のもてなし」

   

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第3話「拝島の猫屋敷」に戻る

 

猫毛アレルギーのせいか、クシャミが止まらない。目もかゆい。

ひとまず外に避難し、夕食を食べる。帰りにコンビニで明日のレースの補給食や水などを買い込み、20時半に猫屋敷に帰還。ヤスコはまだ到着していないようだ。とりあえず、明日の装備の確認をする。

ハセツネ30Kは、入門編とはいえ、かなりしっかりとした装備に関する規定がある。定められた装備を持たずに出場すると、失格になってしまう場合もあるらしい。そのあたり、トライアスロンとは随分違うようだ。

山岳保険証、雨具、ハイドレーションバッグ。全て持っている。食料も水も「これじゃ多いかな?」というくらい持った。これでひとまず安心だ。風呂に入ろう。

風呂に向かう途中、トイレに立ち寄る。ドアを開けると「ウィーン」とモーター音を立てて、便座が開く。そして、便器の底がピカッと光る。ここの宿は、何故かトイレだけ無駄にハイテクだ。

 

はっ…

 

何かいる…

 

目が光って……

 

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「うわぁ〜!!」

 

自分でもびっくりするくらい、吐息交じりの情けない声が漏れる。次の瞬間、天井の電気がパッとついた。

 

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目が光るおばけの正体は、床に置かれた立派な犬の置物。

 

なんでこんなとこにこんなモン置くんだ!

 

置くなら猫だろ!

 

やり場のない、やや理不尽な怒りを胸に秘め、引っ込んでしまったお小水を無視して風呂に向かう。途中、ポーター猫でもねこA〜Cでもない、別の黒猫が不思議そうな顔で俺を見つめていた。猫なのか犬なのかハッキリしてくれ

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風呂場入り口に下げられたのれんを眺め、俺はしばし立ち尽くしていた。入っていいのか、良くないのか。その理由は、のれんに描かれた文字にある。

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「女 ゆ 男」

 

女湯なのか、男湯なのか。

入って確かめようにも、もし女性が入っていたら嬉しい…もとい、アウトではないか。どうしよう。よし入ろう。ディレクターには素早い決断力が大事だ。

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…幸か不幸か、そこは無人であった。脱衣所はそれなりに広い。洗い場も湯船も十分に広く、かつ清潔感がある。

トイレといい風呂といい、ビジネスイン拝島は水周りにこだわりがあると見た。風呂とトイレは重要だ。そこが充実しているのは大変ありがたい。無人の大浴場を贅沢に使い、のびのびと風呂に入る。

ビジネスイン拝島…いいじゃないか。猫毛アレルギー気味だけど、俺、もともと猫好きだし。犬の置物には肝を冷やされたが、トイレはハイテクだし。風呂は広くて快適だし。ヤスコよ、いい仕事をしたぞ。

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風呂から出てしばらくすると、21時45分、ようやくヤスコが到着した。ロビーに迎えに行くと、既に目が笑っている。自分で取った宿であろう。笑うでないわ。

 

「おせぇ!俺はもうとっくにスタンばってんだよ!

猫とか犬とか!」

 

「は、はいw すみませんww」

 

笑うなと言っておろうに。怒りながら笑っている俺が言っても説得力がないか。

 

ヤスコのチェックインはスムーズに終わり、彼女の部屋「秋桜」がどのようなものか、一緒に確認してみた。

無駄に重厚な装飾が施されたカーペット。そして、花柄で統一されたソファーにベッドカバーとカーテンが無意味な迫力を生んでいる。あの魔城カサブランカと同等クラスのスイートルームではないか。

特筆すべきは、部屋にそこはかとなく漂う古い下水のニオイ。秋桜の香りでは断じてない。あの線香の匂いは、これを消すためにあるのだろうか。俺の部屋には全く問題がなかったのに、よりによってヤスコの部屋が。

水周りにこだわりを見せていると思わせておいて、そこはただでは済まさない。そんな意外性に満ちたトリッキーなもてなしこそ、我らがビジネスイン拝島の真骨頂か。

ガックリと肩を落とすヤスコ。ダメだ、笑いが止まらない。おやすみなさい。

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第5話「トレイルの洗礼、山男たちの気迫」に続く

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