心を決めたら見えたもの。

      2017/01/25

2014年宮古島トライアスロン完走

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2014年4月22日(火)、23時。

宮古島トライアスロンの完走を果たした俺は、鎌倉のマンションに戻ってきた。夢のようだった宮古島から、現実に戻ってきたということでもある。少し迷ったが、リストバンドを切った。

2014年宮古島トライアスロン_リストバンド

 

レース中は苦しくて仕方なかったけど、信じられないくらい充実した。あれほど熱くなったのは久しぶりだった。

2年前、「何をしたいか」と考えたときはボンヤリとしか見えなかったが、「何が好きか」と考えたときにいくつか浮かび上がってきたもの。それらをまとめれば、笑えること、熱くなれること、感動できること、そういうものだった。

 

(ああいうものが好きなんだなぁ、おれ…)

 

宮古島トライアスロンの完走メダル、完走証、そしてフィニッシュシーンの写真を眺めながら、ひとりビールで乾杯した。2年前のコバさんの言葉をまた思い出す。

 

「おまえは何がしたいんだよ」

 

多分、俺は見つけつつある。こういう晩酌は実にいい。

2014年宮古島トライアスロン完走

 

それから1ヶ月後、ようやく調停離婚が成立した。別居を開始して1年8ヶ月経っていた。

必ずしも納得いく内容ではなかったが、ひとつの区切りではある。ただ、心の中で直感のようなものがあった。「このままで終わるとは思えない」と。

そして、良きにつけ悪しきにつけ、直感というものは当たるようだ。ほどなくして、今度は別の裁判所から封筒が届いた。今度は金の問題だ。書類でズシリと重い封筒を手にとって、怒りのような諦めのようなドロドロしたものが心の中に渦巻く。

これ以上何を要求したいというのだ。もう持ち合わせているものなどない。残ったのは、このマンションくらいのものだ。俺は空手の形をやり、あるいは走り、気持ちを落ち着かせようとした。それ以外に方法は知らない。

そんな騙し騙しの生活の中でも、Onを通じて新しい仲間と知り合い、「アイアンマンになる」という新たな目標を見つけ、なんとか前を向こうとしていた2014年9月某日、上司から呼び出されてこう言われた。

 

「駒田君、Onやめることになったから」

 

Onを好きになってくれたみんなに何て説明すればいいんだ。ようやく好きなもの、やりたいものを見つけたかも知れないというのに、それも無くなるのか。子供もいなくなり、金もなくなり、目指すものもなくなり、結局何もなくなってしまうのだろうか。

会社帰りに弁護士事務所に立ち寄り、五反田駅のホームで電車を待っていたとき、向こうから来る電車のライトがとても眩しく見えた。フラフラとそちらに足が向く。黄色い線を一歩越えたところでハッと我に返り、足を踏ん張った。初めて「危なかった」と思う。

結局、俺はその日も鎌倉のマンションに戻ってきた。無事に戻ってこれてよかった。「征遠鎮 (せいえんちん)」という形を行い、汗だくになってシャワーを浴び、ビールを一本開ける頃には、先ほどの怒りと焦りと恐怖も少し落ち着いてきた。

征遠鎮
※ 上: 征遠鎮の形。さすがにパンイチバージョンは無い。

 

落ち着いてきたところでソファにどかりと座り、じっと考える。

離婚が成立したら続けざまに訴えられ、金はもうない。残高、なんと15,000円。あるのはこのマンション。本気でやろうとしていた仕事も無くなりそうだ。もう、あるものは数少ない。

 

(生きてりゃどうにかなる)

 

(いざとなったら会社なんてやめたらぁ)

 

(もうモノは何にもいらねぇ)

 

次々とそれまでになかった考えが浮かんできた。そしてふと思いついた。執着するから苦しむのだ。会社に、金に、家に。

それなら、こんなマンション売ってしまえばいい。10年勤めた会社だって、もういい。どうせ、「Onをやるか会社を辞めるか」と二択を迫られていたのだ。Onをやれなくなるなら、ケジメとして会社を辞めたっていいだろう。金は……とりあえず知らん。生きてりゃなんとかなる。

俺の人生を大きく変えた「おまえは何がしたいんだよ」の問いかけから、もう2年が経っていた。何がしたいか見えてきたが、それは消えてしまうかも知れない。それでも、捨て鉢にならずに見届けなければならない。自分の人生もだ。それを捨ててしまえば、やりたいことも完全に消えてしまう。

 

 

「駒田さん、Onのキャスパーさんからお電話です」

 

 

そう心を決めたとき、人生を変えるもう一つの出来事が、俺を待っていた。

 

次回「けんいちうじと雪隠斎の話」に続く

 

そして、宮古島挑戦記 2016 – 第2話「キャスパーとオリヴィエ」にも続く
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