使えない駒田。

   

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「も、もうだめ……」

 

遠ざかるみんなの背中を目で追いながら、僕は両膝に手をつき、ヒューヒューゼイゼイと耳障りな音を立て、必死に息をしようとしていた。

 

「なにやってんだよ!駒田ー!!」

 

ボールを追って走る同級生たちが少しだけ振り返り、心底馬鹿にしたような声で叫ぶ。

僕は彼らの顔を見ることもできず、膝に手をついたまま、校庭をじっと見つめていた。彼らは吐き捨てるように何かを呟き、そのまま先に行ってしまった。

 

「駒田はキーパーな。どうせ走れないんだから」

 

次の体育の授業も、サッカーだった。同級生たちはウキウキと体操服に着替えている。

僕は暗澹とした気持ちでのろのろと着替え、同級生の言いつけに従ってゴール前に立っていた。彼らは楽しそうに走り回っている。なんで僕は走れないんだろう。

ほんの少し走るだけで、喉の奥が詰まったようになってしまう。詰まった管に無理矢理空気を通すようなイヤな音を立て、身体がたちまち動かなくなってしまう。

公害指定の小児喘息。どうやらそういうものらしい。うちのそばに川崎という工場地帯があり、そこから風に乗って何かが流れてくる。それがこの病気の原因だと、お医者さんは言っていた。

お医者さんと言えば、昔から色々な病院に通ってきた。でも、ちっとも良くならない。それどころか、夜になって布団に横になると、いきなり息が苦しくなることがよくあった。そんなとき、僕は座って眠ろうとした。

もちろん、そんなことでよく眠れるはずがない。半分眠って半分起きている。そんな状態で、窓の外が明るくなるまで、ただ時間が過ぎるのを待っていた。

なんで僕はこんな身体なんだろう。どうして。

 

「おい!ボール行ったぞ!!」

 

「あっ…」

 

相手チームにボールが取られ、一気にこちらに向かってくる。気がつけば、ボーッと考えごとをしていた僕の目の前に相手チームのFWがいた。

 

 

「……ほんっと、駒田は使えねーよなー!!」

 

 

体育の授業が終わり、何人かがそう言っているのが聞こえた。恥ずかしいやら悔しいやら、表現しがたい感情が渦巻く。

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それからしばらく、僕は体育の授業を見学することにした。体調が悪いから、と先生に説明した。でも、ただのズル休みだ。これ以上バカにされるのがイヤだった。

でも、ズル休みしている自分自身が、本当は一番イヤだった。

 

次回「最後のチャンス」に続く

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