少しずつでも近づく背中。

      2018/08/28

Diavolezza_2

前回「避けていたはずのランニング」に戻る

 

「も、もうだめ……」

 

フローリアンとジュリアの背中が遠ざかる。心臓の音が異様に大きく響く。酸素が薄い。必死に呼吸を試みる。

 

「大丈夫だ、まだイケるだろ!!」

 

フローリアンが少しだけ後ろを振り返り、心底楽しそうな声で叫ぶ。

 

「カット!」

 

撮影クルーの声が聞こえた途端、俺は両膝に手をついて必死に息を整える。足元にはゴロゴロした岩が見える。ここはスイスのディアヴォレッツァ、標高約3,000m。

 

「よし、もう1回だ!」

 

撮影クルーの注文が飛ぶ。俺の背中をポンと叩き、フローリアンがニカリと笑う。

 

「ヒロキ、行こうぜ」

 

ヨロヨロと立ち上がり、撮影クルーの合図と共に、俺たちは弾かれたように走り出す。

フローリアンもジュリアもとんでもなく速い。彼らと比べるまでもなく、自分は情けないくらい遅い。それでも、ずっと前の自分と比べたら、決して悪くはない。

ランニングやスポーツから逃げ、空手に出会い、自分なりに成長する喜びを覚え、何の因果かまたランニングに巡りあった。

そして今、俺はこうしてスイスの山をヨロヨロしながらでも走り回れている。もう恥ずかしくも悔しくもない。それどころか、今の自分を少し誇らしくすら思える。

Diavolezza_2

 

俺は少しスピードを上げた。フローリアンとジュリアの背中が近づく。

 

「ヒロキ、お前、ウォリアーだな!」

 

俺はもう少しだけペースを上げ、フローリアンの背中をパンと叩いた。

 

次回「灼熱のマーマンキング練。佐渡トライアスロン最終調整」に続く

※ フローリアンとジュリアに引きずり回されている間、こんなことを思っていました。この応援バナーのクリックをお願いします。
にほんブログ村 その他スポーツブログ トライアスロンへ
にほんブログ村

 - ブログ