避けていたはずのランニング。

   

First Cloudsurfer

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「駒田君、確かスポーツ好きだったね」

 

コイツ何言ってんだ?それが、俺が真っ先に感じたことだった。

自慢じゃないが、俺は体育の授業すらマトモに出られたことがないのだ。家の近所の道場で細く長く空手を続けてきたが、それが唯一の運動経験だ。サッカーの授業では、「ホント使えない」とまで言い放たれたことすらある。そんな俺に向かって、よくもまあ……。

 

「いえ、別にスポーツが好きってわけじゃ……」

 

「今度ウチでランニングシューズをはじめることになってね」

 

上司は勝手に話を進める。それにしても、ランニングとは。俺が人生で最も避けてきて、かつ、煮え湯を飲まされてきた、あのランニング。

 

「いや、ランニングだけはちょっと……」

 

「それを駒田君に是非やってもらいたい」

 

ダメだ、全く聞いちゃいない。何が何でも俺に担当させるつもりのようだ。

その日の夜、鎌倉のマンションのリビングルームで、「クラウドサーファー」という名の黒と緑のカラーリングをしたシューズを目の前に、俺はやや呆然としていた。そして、遠い小学生時代の記憶が蘇ってきた。

遠ざかるみんなの背中。両膝に手をついて俯いたときに見えた土埃。喉の奥から鳴る耳障りな音。どれひとつ取っても、楽しい記憶ではない。

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これまでの人生で避けてきたはずのランニング。それがまさか、何の因果か仕事になってしまうとは。

俺はしぶしぶクラウドサーファーを玄関に持っていき、靴紐を締めて外に出た。

First Cloudsurfer

 

次回「少しずつでも近づく背中」に続く

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