素質はない。逃げ道もない。

   

拳生会_1

前回「最後のチャンス」に戻る

 

真光流拳生会。それが、僕の家の近所にあった道場の名前だった。

稽古は毎週日曜日の夕方5時から7時まで。週末しか稽古がないのは、先生たちは本業を持っていて、空手は趣味で教えているからだった。

週1回の稽古は、部活で毎日運動している同級生たちから比べればとても少ない。でも、僕にはそのくらいがちょうど良かった。

それに、小学校時代にロクに身体を動かして来なかった僕は、自分の身体の動かし方すら分かっていなかったのだ。

そんな僕に、先生たちは親切に、辛抱強く教えてくれた。あれこれ色々な技を教えてくれるのではなく、ひとつひとつ、確実に教えてくれた。

 

例えば、一番基本的な技。正拳の追い突き。右拳を腰だめに構え、右脚を一歩前に踏み込み、同時に右拳を突き出す。そして、次は左脚で踏み込み、左拳で突く。それだけの技だ。空手を習い始めて、最初に覚える技。

それを、場合によっては1時間もずっと続けた。追い突きをしながら道場を何往復もした。地味だが、技をひとつひとつ覚えるのは楽しかった。

ただ、気になることもあった。小学校時代の同級生の何人かが、同じ道場に所属していたのだ。体育の時間に「駒田は使えねーよなー」と言っていた彼もいた。ただ、彼はあまり道場には顔を出さなかった。

それでも、一緒に稽古をするときには彼らとの違いをまざまざと見せつけられた。彼らは技の覚えも早く、それを組手でパッと使って見せるのだ。

 

「駒田、組手やろうぜ」

 

そう言われても、僕は相手を前にすると、どんな技をどんな風に出せばいいのか、まるで分からなかった。一方、彼らは実にうまく組手をした。僕はどうしても敵わなかった。

自分にはなんの才能もないのだと分かった。でも、今度こそ辞めるつもりはなかった。なぜなら、ここでダメなら、きっとどこでもダメだろうと知っていたからだ。

それに、もうひとつ理由があった。人と比べてしまうと情けなかったが、前の自分と比べると、少しずつ良くなっているのが分かったからだ。それが楽しかった。

拳生会_1

 

そして、そのまま四半世紀も空手を続けることになった。

 

次回「避けていたはずのランニング」に続く

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