スイスから日本へ、雲を集める旅 – 第3話「英語死プレゼン」

   

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第2話「ムルクのオシャレ監獄」に戻る

2015年9月21日(月)、現在18時。

今日は、アメリカとヨーロッパのディレクターたちが、キャスパー・オリヴィエ・デイビッドを含めた5人の役員と会議をする日だ。

ディレクターが来年の営業・マーケティング戦略をプレゼンし、役員たちからインプットを受ける。その上で、来年の計画を決めることになる。

しかしどうしたことだろう。アメリカチームと役員メンバーは、かれこれ4時間経っても戻ってこない。しかたないので、今日の日程をほぼ消化し終えたヨーロッパチームと一緒にファンラン。

俺にとってはそろそろ時差ボケが厳しくなってくる時間帯だが、時差ボケを治すには走るのがいいと聞いたことがある。走り始めてすぐに走って良かったと思う。最高の景色だ。

「ヒロキ、次のレースは決まってるのか?」

「うーん…今年ダメだったから、来年もアイアンマン・ジャパンに出たいな」

「アイアンマン・チューリッヒもいいぞ!」

こんな景色の中を走れるなら、いつかやってみたいなと思う。

「制限時間15時間だけどね!」

うむ…もうしばらく先かな。

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翌日、9月22日(火)。朝一番から、俺の出番となった。

プレゼンの場所は、キャスパーやオリヴィエたちが泊まっている最上階。キッチンやダイニングに加え、いくつもバスルームやベッドルームがあるらしい。とんでもなく広くオシャレな家、といった感じの場所だ。

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そのダイニングにあたる場所で、役員を目の前に1時間半のプレゼンが終了した。来年の活動計画や予算は、大筋で受け入れられたようだ。あとは役員達の最終的な決裁を待つ。プレゼン中、英語死しなくて良かった。ギリギリドローといったところか。

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役員へのプレゼンの後、いくつも小さなセッションをこなし、いよいよ最後の試練がやってきた。

役員たちにプレゼンした内容を15分に圧縮したものを、本社の各部署の責任者たち、そして各国のディレクターたちの前で発表するのだ。アメリカ、ドイツ、イギリス/フランス/オーストリア/オランダ、スイスときて、日本の出番は最後。

他チームの発表は、それぞれの15分の持ち時間をアッサリ超過して、俺の出番は押しに押しまくった。あまりに時間を押したので、よりによって俺の出番の直前に休憩が入る始末。こういうの、緊張を増幅させるだけなのでマジでやめてほしい。

プレゼンが終わった他のチームは、みんな疲労が見えるが、どこか安心した雰囲気を醸し出している。そうなると、俺はさらに緊張する。大勢の前で英語プレゼンなんて、そもそもやったことがないのだ。

プレゼンの内容自体は問題ない。あとはプレゼンの仕方の方向性。

1. 日本人的にひたすら真面目
2. 笑いを獲りに行く

この二つのどちらかでいこうと考えた。

…というか考えるまでもない。後者でいく。英語でどこまで笑いを獲れるのか、それが俺のチャレンジだ。

休憩時間が終わり、コーヒーやケーキを手に戻ってくるみんな。全員の目の奥が笑っている。ひとりだけいる謎のアジア人に注目しているのが良くわかる。困った。心臓が飛び出しそうだ

こういうときは、自分を遠くから見るに限る。

クローズアップで見てしまうと、状況に飲まれそうな「俺」だけがいる。しかし、ロングショットで見るならば、胸から下に大汗をかいた「アジア人」がひとりいるだけだ。ハタから見れば笑える状況だ。自分を笑ってしまえばいいのだ。

「俺が最後だね」

プレゼンを切り出した。

「みんな疲れてるね。わかるよ。

俺の『日本語⇆英語翻訳システム』は電池切れ寸前だ。これを俺は英語死と呼んでいる」

わざとカタコト気味に話すと、予想外に爆笑をゲット。笑いの敷居が低いのか?アメリカのディレクターは机を叩いて喜んでいる。いきなり目標達成。これで安心して自由に喋れる。

「ここにいるみんなのおかげで、オン・ジャパンを5月に設立できた。2人仲間も増えた。

1人は営業担当のカズ。アイアンマン・ハワイに出たこともある、『世界の鎌田』だ。

そしてもう1人はヤスコ。ニックネームは『ヤスコ姫』。実質的に俺たちのボスだ。マジだよ」

キャスパー、マーク、オリヴィエ、爆笑。マークにいたっては、「ヤスコは俺のボスでもあるんだよ!」とガヤを入れてくれる。ありがとう、マーク。

「この場にいられて光栄だ。Onは俺の人生を変えてくれたと思っている。

君たち全員、俺にとっては “Happiness Deliverer” だ。

だから、俺が幸せにしてもらえたのと同じように、日本のランナーにも幸せを届けたい。

これから説明するのは、どうやって日本のランナーに幸せになってもらうかだ」

もう笑いはいらない。15分全力で話す。

「以上だ。電池、切れたよ」

最後にもうひと笑い。自分の席に戻る途中、みんながパシパシ俺を叩いてくれる。関取になった気分だ。

席に座るとき、キャスパーがハイタッチを求めてくれて、オリヴィエが肩をグッと抱いてくれた。

なんとかうまくいったようだ。任務、完了。

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最終話「雲を集めに」に続く

※ 本当に緊張しました。下すか上げるか、どっちかで終わる以外に結末はないかと。ギリギリドローで切り抜けられて安心しました。下の応援バナーのクリックをお願いします。
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